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第655回 ますます高まる国学ブーム
(2015年02月02日)
“中国梦”の実現を目指す習近平政権は社会主義の核心的価値観として、国学の復活を大いに奨励しています。既に2013年末、中国哲学史学会会長で精華大学国学研究院長の陳来教授は人民日報に<新儒家后:儒学何为>と題する評論を発表し(2012.12.22)、その中で、「近代儒学の構築は2度の歴史的チャンスに遭遇した。最初が、熊十力、梁漱溟、馬一浮、馮友蘭に代表される1930-40年代の抗日戦争期であり、次が、21世紀の現代である」「儒学には、儒学者や哲学体系としての存在のほかに、庶民の日常に無意識に存在している中国人の文化的心理構造としての存在があり、人々の倫理観に深い影響を与えている」と、「学術儒学」と「文化儒学」という呼称でそれぞれを論じた上で、「中華民族と中華文化の復興につれて、儒家の新しい哲学体系の構築が行われるだろう」と結んでいます。
こうした主張が、儒家の人類の発展に呼応した本質的な発展につながるのか、或は、政治に対する儒家のある種の阿りに堕してしまうのかは、しばらく注意深く観察する必要がありますが、国学に対する関心の高まりは、単に儒家に対する注目に止まってはいません。2014.4.17付人民日報では荘子の思想が、4.27では道家の“無為”思想も大きく取り上げられました。儒家については、更に分け入った分析も紹介されています。4.27には<原始儒学の精神を発揚しよう>、7.18日には<儒学と科学>の関係を論する評論が掲載されました。また、儒学の様々なキーワード、「礼楽」「成人」「義」「五倫」「廉」などを個別のテーマとして掲げた記事も増えています。
関連する社会の動きを紹介する記事も多くなりました。孔子の故郷、山東省曲阜は道徳都市の建設を標榜、同市の師範大学には国学院が設置され、村の中心広場には“孝徳”掲示板が掲げられて、どの家が老父母にどれだけ生活費や食糧を提供しているかが掲示されたとのこと。貴州省貴陽市の孔学堂では儒家の伝統的なスタイルに則った成人式が行われました。北京市西城区の青少年国学公益大講堂では、小中学生のために100もの講座が開かれ、2月23日には孟子第74代の孟繁佳教授による<孝経>の講義が行われた、と報じられました。
大學はもとより、小中学校の語文教育にどう経典を取り入れるかの議論も盛んになり、国学教育を通して核心的価値観を育成しようという動きは過熱するばかりです。