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第656回 地方債務問題、これまでの対応
(2015年02月09日)
2014年5月19日、中国財政部は、国務院の承認を経て、<2014年地方政府債権自主発行・償還モデル地区に関する規定>を打ち出しました。これにより同年から、上海市・浙江省・広東省・深圳市・江蘇省・山東省・北京市・江西省・寧夏回族自治区・青島市の10地区で実験的取り組みが始まることになりました。同規定は第2条で「自主発行・償還とは当該地区が国務院が認めた起債規模内で自主的に当該政府の地方債を発行し、元本利息の償還支払いを行うこと」、第4条で「債権の期限を5年もの・7年もの・10年ものの3種、比率は4:3:3とすること」、第13条で「発行利率は同時期に新規発行された国債の利率及び市場の利率を参考にそれぞれの発行方式に従って決めること」などを盛り込んでいます。
ここ数年、地方債務の増加は大きな問題になっています。リーマンショック後の2009年に前年比61.92%と急激な増加があったものの、2010年には同18.86%増と一旦落ち着いたかに見えました。しかし、2010年の地方債務総額10兆7175億元に対し、2013年6月末には地方政府の返済債務だけで20兆6989億元、それに保証債務2兆9256億元、救済債務も6兆6506億元に達しました。同年後半に若干鈍化したものの、償還期限から見ると、2018年には50兆元近い債務が期限を迎えます(2015年、既に浙江省寧波市では毎日1億元近い債務の返還が必要になっている)。同年末の中央経済工作会議の6大任務の中でもこの点が指摘され、2014年4月の国務院<2014年経済体制改革深化重点任務に関する意見>で示された7方面にわたる重点の中では、政府債を主体とした地方政府起債融資メカニズムの確立と、それによる融資受け皿会社からの政府への融資機能の剥離が謳われています。
地方債の発行では、当該地方政府の信用格付けが必要になりますが、これについても、2014年に三等九級(AAA、AA、A、BBB、BB、B、CCC、CC、C)のランクと、格付け会社の市場化などが発表されましたが、今後の実施過程で上記10モデル地区にAAA以外の格付けがなされるか、注目されています。既に実施された広東省と山東省にはいずれもAAAランクが付けられました。
2014年5月、財政部は江蘇省の174億元から青島市の25億元までのモデル地区の地方債起債規模を公表しましたが、これらの調達費用がどう使われるかにも関心が集まっています。