トップ > 現代中国放大鏡
Last Update:
第657回 生産能力の調整−その1−
(2015年02月16日)
1年前の人民日報(2014.2.17付)に<“退路”で新路を歩みだせないだろうか>という記事が掲載されました。市場の低迷、環境保護のプレッシャー、行政からの厳しい要求という三重苦に喘ぐ鉄鋼業界を取り上げた記事で、その前年に国務院が<遅れた生産設備淘汰プラン>を発表、5年以内に8000万トン分の設備を減らすることを打ち出したことに関連して、鉄鋼業の盛んな河北省の関連した動きを中心に、その問題点と対策を紹介しました。
生産能力過剰問題はここ数年ますます大きな問題になっています。2013年の18期3中全会では、生産能力の過剰を防ぎ解消するための長期的なメカニズムの確立と結果の業績評価への組み入れが示唆され、同年10月には国務院から<生産能力の深刻な過剰矛盾を解消することに関する指導意見>が出され、淘汰の嵐が吹き始めました。では、そもそも何を基準に「生産能力が過剰だ」と判断されたのでしょうか。
2014.3.17付人民日報の<生産能力過剰再分析>という記事の中で、陸百甫国務院発展研究センター学術委員会顧問は記者の質問にこう答えています。「欧米諸国では一般に利用率79〜83%を合理的水準とするが、2013年に中国企業家調査系統(CESS)が実施した中国企業経営者アンケート調査では、中国企業の利用率は72%(製造業70.8%)しかなく、70%の企業経営者が自分の産業は過剰だと認識している」「紡績服装服飾業・製紙及び紙製品業・化学原料及び製品業・医薬製造業・電機及び器材製造業・コンピュータ通信及びその他の電子設備製造業など19産業の利用率が79%以下であり、7産業は70%以下だ」
2014年3月15日の全人代<国民経済と社会の発展計画に関する報告(2013年執行状況と2014年の草案)>では、鉄鋼・セメント・電解アルミ・平板ガラス・造船などの深刻な過剰が指摘されました。例えば、電解アルミでは、建設中の設備が完成してすべて生産に投入されると、利用率は50%にまで落ち込んでしまうとのこと。中国社会科学院工業経済研究所の黄群慧所長は「過去にも生産設備過剰問題は何度かあったが、今回の試練は空前だ。2008年の世界金融危機後に発生し、しかも、世界の新工業革命と先進国の“再工業化”の下にあり、加えて中国の工業発展も後期に入り、経済成長は下降気味だ」と分析しています。
こうなった国内的要因、今後の対策については、次回、鉄鋼業界を例に分析しましょう。