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 第658回 生産能力の調整−その2−

(2015年02月23日)

鉄鋼業界が生産能力過剰に陥った原因の一つに、環境保護面での政府の杜撰な管理に乗じ、民間企業が「脱硫装置は1セット3000万元ほどかかり、使用すればさらにコストがかかる」とこれを無視して参入し、短期間で儲けることが可能になっていた点が挙げられます。こうした増産の結果、1年前の2014年3月、第5回中国鉄鋼計画フォーラムが明らかにしたところでは、鉄鋼過剰生産能力は2億トン(日・米の総生産能力に相当、7000億元の投資と40万人分の雇用に匹敵)を突破、中国鉄鋼協会CSPI鋼材総合価格指数は過去20年来最低の95ポイントを記録、その後も100ポイントを割り続け、2015年1月末には77.13ポイントと前年同期比20.52ポイントの下げ幅を記録しました。1月の全国粗鋼生産量は6763万tで前月比1.48万tダウン、鋼材は輸出量1029万tに対し輸入は115万tで972万tの出超、国内消費量は186.81万tと前月比2.10万t(1.11%)ダウンとなり、在庫の積み上げと、それを安価な輸出で何とか補おうという趨勢が顕著になっています。
いかにして過剰な設備を淘汰するか、はリーマンショック直後から問題提起されていましたが、古い設備を廃棄する一方でそれを上回る設備投資が行われ、生産力の削減にはつながりませんでした。また、鉄鋼業は過去、GDPに対する貢献度が高く、更に雇用面での役割も無視できません。例えば、河北省唐山市では5年間で4000万トン分の能力削減を求められていますが、それによって生じる数十万人の雇用をどう解決するかは容易なことではありません。また、銀行も淘汰に待ったをかけます。淘汰の嵐が吹き始めた2014年春、国鉄鋼協会会員の負債率は70%、総融資額は1.3兆元に達し、鉄鋼業界全体では2兆元を超えていました。高炉は抵当に入っており、これが淘汰されれば、その分が銀行の不良債権になるわけです。こうした様々な要素を勘案すると、淘汰には総合的な対策が必要で、やみくもに数値上での削減に走れば、社会的に大きな混乱を生むことは避けられません。特に、今後は、環境問題に関わる制約要因が絶対不可欠の要素として浮上しています。
“老大”(国家プロジェクト)は認可を得て、“老二”(地方プロジェクト)は勝手に、“老三”(民間企業プロジェクト)はこっそり建設していた、と言われる鉄鋼生産設備。建設にしろ、退出にしろ、公平かつ明確な制度設計が緊急に求められています。

三瀦先生のコラム