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 第660回 続くか、中国とドイツの蜜月

(2015年03月09日)

最近の中国とドイツの接近ぶりは誰の目にも明らかでした。EU内でも原理原則を重んじる傾向が強いと思われていたドイツが、中国に対しては経済優先の現実路線を取っていることに対し様々な評価があります。8日付の朝日新聞朝刊は、9面に<独、「中国偏重」修正か>と題する記事を掲載し、メルケル首相の9日の来日の意図を分析していますが、その中では、2005年首相就任以来、2014年3月までにメルケル氏が7回中国を訪れ、中国側も2014年は3月に習近平国家主席が、5月と10月には李克強首相がドイツを訪れ、中国からドイツへの直接投資も急増していることを紹介し、一方、日本とは、今回の訪日が2008年の洞爺湖サミット以来実に7年ぶりであること、ドイツにとって日本はアジアで中国に次ぐ第2の貿易相手国であり、この訪日は、改めて両国の経済関係を強化し、中国偏重だった東アジア外交を修正する狙いがあるのでは、と結んでいます。本コラムでは、2014年9月の第637号で<EU諸国と中国>と題して、関係する動きを概括的に紹介しましたが、2014年を振り返って見ると、中国はヨーロッパ全体に外交攻勢を仕掛けており、独仏伊に限らず、海のシルクロードの延長上にあるギリシャやスペインへは、その経済不振へのテコ入れをとっかかりに積極的な援助を展開して橋頭保を築こうとしていますし、ポーランド、チェコ、ルーマニア、ハンガリーといった東欧諸国とも、ユーラシアンランドブリッジの延長上の国々として関係を深め、また、ノルウェーやアイスランドには、北極海航路の開発を視野に拠点づくりを行っています。こういった総合的な戦略の中で中心線を形成するのが、中国とドイツを結ぶ鉄道コンテナであり、また、環境技術を含め、日本と並ぶ先端技術を保有することで、当面の最大課題である経済構造の転換と環境対策に貢献が期待できるドイツは、日米同盟と適当な距離を保ち、中国にとって直接の脅威を構成しない点も考慮すると、極めて有用なパートナーです。しかし、ウクライナ問題が新たな東西間の緊張を醸成し、中露が緊密な連携を図る中、中国との政治的経済的紐帯を更に進めれば、逆にドイツの今後の外交的選択肢を狭め、それが経済のアキレス腱にもなりかねません。英仏にしても中国との経済交流は望みつつ、距離には慎重であり、メルケル首相の今回の訪日という一石による今後の動向が注目されます。              

三瀦先生のコラム