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第665回 誘拐撲滅へ新しい動き
(2015年04月13日)
最近、誘拐犯の摘発が度々聞かれるようになりました。2013年には、27の一級行政区の公安機関が連携、乳幼児をネット販売していた四大誘拐団を摘発し、乳幼児382人を救出、容疑者一〇九四人が捕縛されました(人民日報2014.2.28)。その手口はリーダーの下、サイトやQQの管理・保守責任者とその工作員による活動、証明書偽造担当者を通じた関連証明書の買上げ、ネットショップでの児童販売など一貫した産業チェーンを形成するものでした。
こうした犯罪には役人も関与します。陝西省富平県では、副県長・衛生局長・婦女子保険員院長らが、2011—2013年に産婦人科行院から多くの乳児を連れ出して売りとばした事件が起きました(人民日報2014.1.7)。
中国で誘拐の根絶が難しい背景には、“不孝有三,无后为大”、「先祖を祀る後継ぎがいないのは最大の不孝」という儒教の教えがあります。買い手がいるから商売も成立するので、地方によってはこれを専業とする者が堂々とまかり通っていました。買って来た子供だと村中の人が知っていても誰も咎めないし、大事な跡継ぎだから虐待も少なく、“新しい”親子の情も芽生えます。従来の刑法(第241条)には、「虐待していない、救出を妨害しない場合は責任を問わなくても良い」とあるのですから、買い手が無くなるわけがありません。
2014年、こうした誘拐に対する政府の取り組みに大きな進展が見えました。同年10月に公布された刑法修正草案で「どういう状況であろうと、子供を買う行為は犯罪である」としたことは画期的と言えましょう。「“新しい”親子の情から子供を引き離すことは被誘拐児に再度精神的ショックを加える」と実の親の引き取りの是非さえ論じられていましたが、買い手に引き続き養育を依頼するケースは社会福祉院での養育に切り替えられました。
2014年4月から、全国人民代表大会常務委員会は、全国的に誘拐・虐待・遺棄・性的暴行等に関する未成年者保護法執行状況調査を開始し、陝西省も同月から、全国初の公安機関による誘拐対策ネット“三秦回家網”を開設、協力を呼び掛けています。民間でも“宝貝回家”サイトは10万人のボランティアを擁し、活発な救済活動を行い、2014年秋までに900人以上を救出しています。2009年、政府は世界初の誘拐児童親子認定専用DNA情報システムを立ち上げ、以来、捜査の進展を後押ししています。