企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

 第688回 長江経済帯

(2015年09月28日)

「長江経済帯建設を推進し、黄金水道の整備や長江沿岸の港湾に関する重要プロジェクトを順次着工し、総合的な立体的大規模運輸ルートを構築し、産業移転モデル模範地区を建設し、産業が東から西へと段階的に移転するよう促す」。2015年春の全人代における李克強首相政府活動報告の中に盛り込まれた文章です。
2014年9月、国務院は<黄金水道に依拠し、長江経済帯の発展を推進することに関する指導意見>を配布し、上海・重慶両直轄市と、江蘇・浙江・安徽・江西・湖北・湖南・四川・雲南・貴州各省を含む11の一級行政区を網羅した長江経済帯構想を提示しました。この経済帯は、面積約205万平方キロ(全国の約20%強)、人口と総生産額は同40%を占め、中国の東部・中部・西部を貫く大経済帯になります。この方針に沿って、2015年2月には<2015年長江経済帯発展推進活動要点>が論議され、全人代報告へと結実したのです。
中国の地域発展は21世紀に入って全土が10数個の経済圏を形成、更にそれが高速鉄道や高速道路、航空路線などによって紐帯を強めました。特に最近は相対的に遅れていた中西部地区に注力し、2014年の鉄道建設8088億元の78%を、新規開通路線では80%(6747キロ)を中西部が占めました。この成果は各地域別成長速度にも表れ、2014年工業増加値は、東部7.6%増、中部8.4%増、西部10.6%増と内陸部の成長スピードが沿海部を上回っています。こうして、中西部にも長江中流都市群や珠江-西江経済帯等が姿を現し始めたのです。 
上記活動報告では、「長江経済帯」と「一帯一路」「京津冀協同発展」が三大戦略として提起されました。「一帯一路」については2014年に既に戦略プランの策定が完成しており、「京津冀協同発展」の進展状況については本コラム640号でも紹介していますが、「長江経済帯」構想は「成渝西昆菱形経済圏」及び「一帯一路」との関係が重要になります。西部地区の交通インフラ整備の大発展により、西部地区の四川省成都と重慶市(渝)に陝西省西安と雲南省昆明が菱形経済圏を形成、これが陸の北方シルクロード経済帯(西安-中央アジア-北欧)と南方シルクロード経済帯(昆明-マンダレー-カルカッタ)、更に21世紀海上シルクロード(上海-泉州-クアラルンプール-カルカッタ-スエズ運河-南欧)に繋がり、網の目のようにユーラシア大陸を網羅する大中華経済圏を構築する壮大なプランが始動しているのです。

三瀦先生のコラム