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第六十九回 "南水北調"の着工
2002年12月27日、朱首相が人民大会堂で長江の水を北方へ引く"南水北調"プロジェクトの着工を宣言しました。その約1ヶ月程前、国務院で3本のル−トを3期に分けて完成させる<"南水北調"プロジェクト全体計画>が最終的に承認されました。即ち、 ① 東部ル−ト:揚州から洪沢湖等4つの湖を通り、黄河をくぐり抜け、北上ル−トと煙台等東部向けル−トに分かれる。②中部ル−ト:丹江口ダムから発し、鄭州の西で黄河を横断、京広線沿いに北上して北京、天津へ注ぐ。③西部ル−ト:長江上流の通天河等にダムを設けて取水、長江、黄河の分水嶺にトンネルを通して黄河に流入させる。
2001年の中国水資源公報によれば、北京市と河北、山西、河南、山東、遼寧5省では供給量の50%以上が地下水で、深刻な地盤沈下をもたらしています。この3本のル−トが完成する2050年には448億立方メ−トルの水が北方地区に供給され、地盤沈下の改善に役立つとともに、用水量の大半を占める農業用灌漑、需要が増大する工業用水が確保され、また、北方地区の飲料水の水質向上にもつながることが期待されています。
その点からも、今、このプロジェクトで重視されているのが水質の保持。政府は主要工事とほぼ同額の費用を投入して"清水廊道"プロジェクトを立ち上げ、特に、途中経由 する河川や湖の汚染がひどい東部ル−トでは、沿線各都市に127箇所の汚水処理場を設け、汚水処理率80〜90%を目指しています。山東省では、生産能力2万トン以下の小規模紙パルプ工場を強制的に閉鎖させるなど、工業汚染源の取締りに力を入れています。
"南水北調"プロジェクトで供給される水の値段は、輸送距離、コスト、各地域の分担費用、供給量など様々な要素を勘案して決められており、例えば、東部ラインの山東省では0.6元、中部ラインの黄河以南が0.2元、以北が0.7元、北京では1.2元などとなっています。また、庶民の基本生活用水は定額で、オ−バ−すれば追加徴収されますし、洗車とかサウナといった特別な需要は、時には10数倍の値段になることもあるようです。
国務院は、"南水北調"プロジェクト実施にあたり、"水の節約が第1で水の調達は第2""環境保護が第1で通水は第2""生態が第1で水の使用は第2"という3原則を掲げました。世紀の大事業が本当の"造福工程"に成るか、注目されます。