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第691回 「巡察使」旋風
(2015年10月19日)
周知の如く、習近平政権の下、紀律検査の嵐が吹き荒れています。2014年、それまでは年2回だった巡視が年三回になり、年間で21の一級行政区(新疆建設兵団を含む)に対して通常の巡視が、19の部門・国有企業事業に対して特別巡視が行われました。同年の第2回巡視によって、2年足らずで全ての一級行政区をカバーしたことになります。
2015年1月17付人民日報に掲載された<2014年巡視工作総述>によると、2014年の巡視の特徴は、巡視の位置づけ・目標・内容・方式・枠組みなど10の方面を明確にしており、その内容としては、鉱産物資源・土地の譲渡・工事プロジェクト・民生資金・特別プロジェクト経費管理などの金銭的腐敗、官職の売買、問題ある人物の抜擢、水増し任用などの人事上の腐敗が洗い出しの重点になっています。
2014年12月には<中央規律検査委員会派遣駐在機構建設強化に関する意見>が政治局常務委員会で採択され、まず、中央弁公庁・中央組織部・中央宣伝部・中央統戦部・全人代機関・国務院弁公庁・全国政協機関に設立されることになり、2015年3月25〜27日には、それぞれに紀律検査組組長が赴任しました。このような党と国家の重要機関にも紀律検査組が設置されたことは、巡視に聖域を設けないという重要なメッセージになっています。
地方に対する巡視にも力が入れられ、2014年7月、中共中央政治局常務委員兼中央紀律検査委員会書記兼中央巡視工作指導小組組長王岐山は内蒙古で開かれた座談会で地方に対する巡察活動を強化する手はずを整えると明言、その結果、同年11月末までに各一級行政区で2013年の7.5倍に当たる1528件の庁局級幹部絡みの問題が発覚したとのことです。
2015年1月31日、10の一級行政区及び国家体育総局・中国科学院・一汽集団など3組織を対象とした2014年第2回巡視の状況が全て公開されました。また、2015年2月10日には、文化部・環境保護部・中国科学技術協会・全国工商連合会・中国国際放送局・南方航空・中国船舶・中国聯通・中国海運、華電集団・東風汽車・神華集団・中国石油化学工の13組織を対象とした2014年第3回巡視状況も全て公開されました。更に同月には2015年の第一回巡視、6月に第二回巡視も始まりましたが、乱脈ぶりが明るみに出ることで、政権に対する信頼と共産党に対する不信感どちらも増幅させる結果になっています。