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 第698回 自由経済区の拡大

(2015年12月07日)

2015年3月24日、習近平主宰の中共中央政治局が<広東、天津、福建自由貿易試験区全体プラン>と<上海自由貿易試験区改革開放をさらに深化させるプラン>を通過させました。中国経済は“新常態”(ニューノーマル)と自らネーミングした調整期に突入していますが、次なる発展のステップに乗せるには新たな思いきった措置が必要です。自由貿易試験区の拡大発展はまさにそのための重要な突破口として期待されています。先行した上海自由貿易試験区で得た1年半の経験を活かし、全国にその複製を広げる第2段階の実験が始まったのです。そこで選ばれたのが広東・天津・福建で、平行して計画が進んでいる一帯一路((陸のシルクロードと海のシルクロード)建設、京津冀地区の協同発展、長江経済ベルトの建設といった国家プロジェクトとこれらを連動させて対外開放を一層進め、そのエネルギーを各地域の新たな発展の起爆剤にしようというプランです。
中国は1980年に深圳など4つの経済特別区を、また、1990年には上海に浦東新区を設けましたが、今回の措置はそれに並ぶ重要な意義を持つものです。2015年3月15日付人民日報は、「この措置はアメリカをはじめとする世界の経済強国が打ち出す新しい世界貿易のルールに対し、中国がグローバルな経済貿易ルールの主導権を奪い取り、自由貿易競争の勝利者となるためのものだ」と豪語していますが、明らかにTPPに対する挑戦状とも言えましょう。
ともあれ、これらの自由貿易試験区に課せられている任務は、人民元の国際化などを通じ、中国経済が世界と一層リンクしていくために障碍となっている様々な難題を解決することであり、上記の記事もその主要なポイントとして、投資管理制度の確立、貿易の一層の利便化、資本取引と金融サービスの開放、関連する政府の職能の転換による市場化の促進などを挙げています。中国が中進国の罠に陥らないためには避けて通れない道です。
内地と香港・澳門の経済協力の深化に立脚する広東自由貿易試験区、京津冀地区の協同発展に立脚する天津自由貿易試験区、海峡両岸の経済協力に立脚する福建自由貿易試験区、そして、投資や貿易の利便化、通貨取引の自由化、効果的かつ迅速な監督管理と法治環境の整備といった各面で先鞭をつける上海自由貿易試験区、それぞれに新しい動きが始まっていますが、次回は新しい三つの自由貿易試験区のスタート情況に焦点を当ててご紹介しす。

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