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第702回 映画産業の動向−その2−
(2016年1月12日)
北京国際映画祭には映画化された5つの京劇<龍鳳呈祥><霸王別姬><狀元媒><秦香蓮><蕭何月下追韓信>が登場しました。京劇映画化のはしりとしては1905年の<定軍山>、その後にも<野猪林>など何篇か映画化されましたが、2011年に政府や各界が共同で京劇映画化プロジェクトを始動させ、上記の5本以外にも5本の製作が進行、陳凱歌監督による<趙氏孤兒>は2015年11月に完成、日本でも公開されることになりました。なお、90か国以上から930本がエントリーした「天壇奨」はメキシコ映画がグランプリを獲得しましたが、各部門受賞者の半分が欠席で、同映画祭の更なる知名度の向上が求められます。
5月のゴールデンウイークでは、国産映画が明暗を分けました。<何以笙簫默><左耳><赤道>などが興行収入1億元を突破したのに対し、<念念><闖入者>は前評判に関わらず、低調な入りでした。その原因として挙げられるのが配給ルートと上映回数で、どんなに芸術性が高く、質の良い映画でも、観衆の目に届かなくてはなすすべがなく、今後の大きな課題と言えましょう。また、宣伝費用が少ないこと、ニューメディアも駆使した様々な売込みなど宣伝方法の改善も急務となっています。<左耳>の成功は学校のキャンパスでの宣伝、ポスター制作、スターによる宣伝など新味な工夫が奏功した、と言われています。
一つの国で2つの映画祭が競うこと自体に長短がありますが、同年6月には上海国際映画祭も開幕し、108カ国から2096本がエントリー、フランス映画が「金爵奨」グランプリを獲得、国産映画では『煎餅俠』やアニメ『西遊記之大聖歸來』などが評判となりました。7月以降は、上記2本に加え、『捉怪錄』が大ヒットし、陳凱歌監督の<道士下山>も評判になり、国産映画が大いに気を吐きましたが、そんな中で、様々な問題点も指摘されています。
その一つが、興行収入第一で儲け主義に走った結果、質の向上が置き去りにされているという反省です。また、日本のような独自性のある内向きの市場を目指すのか、その逆を行く韓国のような方向を目指すのか、も議論になっています。一方、2015年7月に、CCTVのシネマチャンネルが18本の国産アニメを強力に推進するキャンペーンを始めましたが、テレビの外国アニメ放映制限などと同様な政府によるこういった過度の保護が、却って、“拔苗助長”になり、競争力の育成を阻害している点も見逃せません。