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第715回 東北経済の苦境−その1−
(2016年4月11日)
“新東北現象”と言う言葉をよく目にします。東北が苦境に立たされている現状を表現した言葉です。10数年前、東北は他地域に比べ発展遅れ、2013年に首相に就任した温家宝は同年6月には「東北の振興は、鄧小平が唱えた2つの大局(東部と西部の発展)に次ぐ、第三の大局であり、我が内閣の最優先課題である」と位置づけ、日本や韓国に技術移転を含めた協力を呼びかけ、その結果、東北地区の復興と飛躍的発展を招来しました。2003年〜2013年の10年間、東北三省(黒竜江省・吉林省・遼寧省)は2桁成長を維持し、例えば遼寧省のGDPは2003年の6000億元が2014年には2兆8500万元に達し、一人当たりの額も早くに1万ドルを越え、瀋陽市では、2003年以前の年財政収入80億元が2014年には800億元と10倍になっています。ところが、2014年に入るとこの勢いに急ブレーキがかかりました。同年の三省の成長率は黒竜江省5.6%、吉林省6.5%、遼寧省5.8%でいずれも全国平均を大きく下回り、この傾向は2015年も続き、黒竜江省は5.7%、吉林省は6.5%、遼寧省に至っては3%と全国一級行政区で最悪の数字になってしまいました。勿論、こういった公式発表の数字に対する信憑性も問題にされており、実態はもっと低いのでは、と推測する論調もあります。2014年の状況に対し、人民日報では「理性的に見るべきだ」「東北が衰退しているというのは事実にそぐわない」などと悲観的見方を打ち消すことに意を注ぐ記事が時折顔をのぞかせる一方、事態を直視して原因を究明、対策を提言する記事も目立ちました。その数的比率は、筆者が数えたところでは、2015年1年間でほぼ1:2でした。政府は既に2014年8月には<東北振興を支持する当面の若干の重大政策措置に関する意見>を打ち出しています。この意見では、「1.市場活力を喚起する 2.国有企業改革をさらに前進させる 3.技術革新の推進 4.産業競争力の全面的な向上 5.農業の持続可能な発展能力の強化 6.都市のモデルチェンジ型発展 7.重大インフラ建設の加速」が謳われました。しかし、事態は悪化し、2015年4月10日、李克強首相は吉林省の省都長春で東北三省経済工作座談会を開催、当面の問題について協議しましたが、その前の2015年2月16日付人民日報9面全面に<新常態下“新東北現象”調査>という詳細な分析が紹介されました。