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第七十二回 エイズin中国
「河南省上祭県の人間が来た、と聞くと、みんなおびえた眼をする。検査して問題ない者だけ使ってくれ、と言っても誰も雇ってくれない。」「わしは病気じゃないのに、わしの野菜を誰も買ってくれない。娘は嫁にもいけない。全部断られた。」河南省上祭県芦崗郷文楼村。90年代初め、違法な買血業者の暗躍でエイズが蔓延し、2001年4月の調査では全村の19.33%、ほぼ5人に1人に陽性反応が出ました。
世界で最初にエイズが発見されたのは1981年のこと。その後20年、国連の< 2002年エイズ最新報告>によれば、全世界の患者数は4200万人に達し、アジア地区でも急速に蔓延中で、1985年に北京協和病院の王愛霞医師によって最初の患者が発見された中国でも、患者は既に全国31の省、市に拡がり、その数は100万人を突破しています。中国のエイズは既に潜入期、拡散期を経て急速蔓延期に入り、このままの状態が 続けば、2010年には1000万人に達するとも。主要感染経路は、麻薬の静脈注射(69.8 %)、売血(9.75%)、性行為(8.1%)の3つで、感染者の多くが農村に集中しています。
このような状況に対し、政府は33のの部局が参加したエイズ予防治療合同会議を国務院に設置し、1998年に<中国エイズ予防抑制中長期計画(1998−2010年)>を策定しました。2001年9月には更に<中国エイズ抑制予防治療行動計画(2001−2005)>を 発表して、2010年に患者数を150万人以内に抑えることを目標に、今後、毎年1億元の 資金を注ぎ込むことを決定しました。2003年1月、北京で衛生部全国工作会議が開か れ、遂にエイズ対策が年間最重点項目に位置づけられることになりました。
中国では、家族、親族の無理解や、患者に"エイズ女" というレッテルを貼って追いかけまわすような興味本位のマスコミによる被害がまだまだ跡を絶ちませんが、一方で、1998年に、エイズ患者をケアする全国初の民間組織、"愛心家園"が北京の佑安病院に出来、翌年、地壇病院にも同様な趣旨のクラブが誕生、2001年12月には北京協和病院にエイズ相談ホットライン(01065295046)が開設されました。エイズ予防の一環として、結婚前や出産前のエイズ検査が義務付けられるようになってきていますが、エイズ患者の生きる権利、生活する権利に対する関心も徐々に深まってきているようです。