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第720回 焦眉の急!日中翻訳人材−その2−
(2016年5月23日)
日本では戦後、レベルの高い中文和訳は、東亜同文書院などで学んだバイリンガルに近い優秀な人たちが担ってくれました。日中間の交流量もさほど多くなく、それで充足できたという面もあります。しかし、日中間の交流が飛躍的に拡大する一方、上記の人材が高齢になり、引退すると、人材不足が急速に表面化しました。留学して会話が上達しても翻訳は別モノです。この結果、官庁は勿論、一般企業でも翻訳人材の不足は目を覆わんばかりで、それが、ビジネス上の情報収集分析と企業戦略の策定、法律や契約書の解釈、裁判への対応などで重大な齟齬を生むことにつながってしまったのです。
日中経済交流の進展につれ、企業が組織を挙げて中国語研修に取り組んだ時期がありましたが、そこには重大な欠陥がありました。企業が求めるのはまず日常会話力。この段階で教員に求められる資質は、中国語の発音と文法教育のスペシャリストです。しかし、その次は、新聞、インターネット、文書から情報を収集したり、商用文書や法律文書などの専門書、専門技術資料を読みこなせることが目標になります。そこで第二段階では、口語文法との違いを理解する必要があり、教員には、文法構造、語彙、修辞などから口語との違いを説明できる能力、および社会科学に対する一般知識が求められます。学ぶ側は、分かち書きから脱却して語彙を認定する能力の涵養が欠かせません。第三段階はいよいよ新聞、インターネット、文書から情報を収集できる能力の習得です。この段階の教員には、現代白話書面語の文章上の特徴を説明できる能力と、中国の政治経済社会に対する専門的知識の双方が備わっていなければなりません。最後の第4段階が商用文書や法律文書などの専門書、専門技術資料を読みこなせる能力の育成です。この段階の教員には文法的な説明能力はそれほど要求されません。言葉の面で、法律上、商用上の日中専門用語に関する知識が必要ですが、不可欠なのは高い読解力と高い専門性で、中国ビジネスに長年携わって文書を読みこなせる人が教員としては最適になります。そこで、まず第一の問題点は、第二段階を担える教員の育成です。日中両国とも読解の多くの教員が文学講読から入っており、その結果、第二段階がブラックボックスになり、殆どの企業内学習者は、ビジネス中国語検定の挑戦する意欲があってもこの段階の丸木橋が無いのでみんなここで討ち死に、企業の努力も水の泡になっていたのです。