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第722回 中国とベトナム
(2016年6月6日)
南シナ海の緊張に絡み、ASEAN、特にベトナムの位置取りが大変微妙になっています。中国に対する警戒をてこに、日本とベトナムは政府・民間とも交流が活発になっており、軍事的にもカムラン湾の戦略的要衝としての重要性に、日米中ロ4カ国が虎視眈々と軍艦寄港の機会を狙っています。1974年の西沙諸島での中越両国の戦い、その後の中国による占領、最近の一触即発の危機などは周知のとおりですが、一方で、ベトナムにとって中国との経済関係は切っても切れない関係にあり、バランスを如何に取るかが最大の課題になっています。
中越両国は1000キロ余りの国境を抱え、河口-ラオカイ、憑祥-ドンダン、東興-モンカイなどでは人やモノの盛んな往来や賑やかな国境市場などを目にすることができます。ベトナムにとって中国は10年以上も連続して最大貿易相手国であり、ベトナムに投資している中国企業も優に1000社を超え、観光客の数で見ても、ベトナムへやってくる外国人観光客の4分の1は中国人です。西沙諸島問題で国民に根強い反中感情を考慮しつつ、どうやって関係改善を模索するか、2015年はまさにその手探りの年でした。一方、中国にとってこれは願っても無いチャンス。しかも2015年は中越国交樹立65周年でもあります。同年4月、グエン・フー・チョンベトナム共産党書記長が中国を訪問、9月の反ファシスト戦勝70周年記念式典にはチュオン・タン・サン国家主席が出席したのも、その逆に、7月に張高麗副首相がベトナムを訪問、仕上げに昨年11月に習近平国家主席が18全大会以来初めてベトナム訪問したのも、まさに両者の思惑が一致したからにほかなりません。
同年4月、ベトナム—広西チワン族自治区—蘇州—黒竜江省満洲里—モンゴル—ペテルブルグと結ぶ鉄道輸送が開通し、マイクロソフトがベトナムで生産した電子製品が輸送されました。
また、ベトナムの農産物にとって中国は大事な得意先でもあります。2015年5月には、広西チワン族自治区の崇左駅から、ベトナムのドラゴンフルーツを満載した5両の冷蔵コンテナ車が北京に到着、中国—ASEAN鉄道コールドチェン相互流通システムの試験運行が成功し、今後、野菜・果物などの生鮮食料品、アイスクリームやその他の加工食品、更には各種医薬品の輸送に道が開かれました。様々な物流がベトナムと中国を結び、ベトナムに工場を移した多くの企業にとっては中越間の物流確保が最優先課題になっています。