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第728回 2015年日中関係総括—上半期
(2016年7月19日)
2016年も半年過ぎました。恒例の「前年(2015年)の日中関係総括」をしましょう。まずは上半期から。日中関係は一時の険悪さは脱したものの、南シナ海問題を巡る中国包囲網形成に中国は神経を尖らせ、安保関連法案の登場を利用し、ロシアを始め第二次大戦戦勝国との絆を強調して日本を戦後の国際体制に対する挑戦者と位置づけ、国際世論を味方に付けようと試み、戦争に関し日本に反省を迫る記事が相当な数にのぼりました。同年5月、安保関連法案が国会審議に付されましたが、既に3月の全人代終了後から批判記事が相次ぎ、関連して<日米防衛協力の指針>改定、沖縄基地問題も取り上げられました。<核兵器不拡散条約会議>で日本が各国首脳に広島・長崎への訪問を呼びかけたことに関しては、「侵略者は永遠に被害者にはなれない」という記事が掲載されました(人民日報2015.5.20)。
8月の終戦70周年首相談話が村山談話を継承するかには中国側も大きな関心を寄せました。日中関係改善の糸口となる可能性を含んでいるからで、ほぼ各月に一本、関連記事が掲載されました。こうした動きと平行して、政府間では関係改善への動きも見られ、環境問題・安全保障問題での日中韓の枠組みを活用、政党・国会・財界レベルの交流も進み、4月のジャカルタでの安倍-習近平会見へと繋がりました。翌月、二階俊博率いる日中観光文化交流団3000人が中国を訪問、交流大会には習近平国家主席が姿を現して日中友好を訴え、人民日報はその様子を一面トップで報道、習近平主席のスピーチ全文も掲載されました。
民間交流では何と言っても訪日観光客の爆買いが話題になりましたが、その他、スマートシティ建設に関する両国の協力や学生交流の記事も掲載されました。アベノミクスについては、その効果を疑う記事が主でしたが、日本の製造業の不振を分析した記事が目を惹くのは、中国が今まさに製造業の革新に活路を求めているからでしょう。人民日報2015.5.28付<日本式イノベーションはなぜ深く傷ついたか>は、集積回路、ソフトウエア、インターネット、モバイルでの日本企業“四連敗”の原因を詳しく分析しています。
「日本の良い所は学ぶ」という精神は健在で、自動車学校の質の高さ、禁煙パトロール員の真面目な活動ぶり、立体駐車場の完備、都市の屋上菜園、電気自動車の普及の早さなどが紹介されました。文化面では「遥かなる良寛」(人民日報2015.2.25、賈文婷)が出色でした。