企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

 第729回 2015年日中関係総括—下半期(1)

(2016年7月25日)

2015年7月は、緩和しかけた日中関係が後退したのか、と思わせるような動きになりました。7月15日の衆議院特別委員会並びに翌日の同本会議における安保関連法案採決と参議院への送付、同月21日、日米同盟を主軸とし中国の南シナ海等に関する行動に警鐘を鳴らした日本政府の防衛白書の承認などに対抗し、日中戦争に関する様々な過去が次々と掘り起こされ、日本国民の抗議行動も大きく報道されました。その一方で、共同通信による戦後70周年世論調査の結果として「8割近い日本人が日中関係の改善を希望している」ことも紹介され、また、7月16日に北京で谷内正太郎国家安全保障局長と楊潔篪国務委員が会談し、それぞれの立場を主張しつつも、日中関係改善への意欲を確認したことが報道されています。
8月に入ると、焦点は終戦記念日に因む安倍首相の戦後70周年談話の内容に移りました。同月に人民日報に掲載された日中戦争関係記事は膨大な数に上りますが、単に「声を荒らげて非難する」といった内容より、様々なエピソードの発掘とそれに絡む資料の整備・展示、中国側の主張に沿った啓蒙資料・文化芸術作品の作成に力が注がれました。日本人関係者の中国に対する反省・贖罪、寛大な対応に対する感謝の文とともに、「日本の首相経験者6人が安倍首相を批判している」との記事も掲載されました。安倍談話ついては、「「侵略」「植民統治」「反省」「お詫び」と言った文言はあるものの、いまだ曖昧で誠意に欠ける」といった論調でしたが、これについては両国で既に了解済み、といった印象を与えました。
9月は3日に抗日戦争勝利70周年軍事パレードがあり、また、18日は満州事変勃発の日でもあるため、抗日戦争回顧記事のオンパレードとなりました。9月22日には、昭和天皇の弟、三笠宮による<支那事変に対する日本人としての反省>が取り上げられました。
7〜9月の動きは、2014年から既に準備されていたもののも多く、安保関連法案や70年談話に対する反論と言う側面があったものの、一方では「過去に対する回顧であり、現在の日本人民を敵視しているのではない」との意思表示もありました。その証拠に、10月に入ると抗日関係記事は一転して極端に減り、民間交流による中日友好を促す記事や10月末に開催された北京—東京フォーラムで、兪正声政治協商会議主席が「日本企業の先進技術は学ぶに値する」と述べ、「意見の違いを縮小し、相互信頼を高めよう」と言う記事も登場しました。

三瀦先生のコラム