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第732回 原発ビジネス、世界へ
(2016年8月15日)
安全性への取り組みでは、中国国家原子力事故緊急協調委員会が2015年に国レベルでの緊急特別救援チームおよびその訓練基地として8か所の特別サポートセンターを立ち上げることとし、同年5月に、最初の基地が山東省煙台に開設されました。
こういった国内の動きと呼応するように、原発の海外ビジネスも急展開しつつあります。この方針は、2014年春の全人代政府工作報告で初めて提起され、2015年1月には李克強首相が国務院常務会議で加速を呼びかけ、最近の首脳外交では鉄道と並ぶ主要項目としてしばしば取り上げれられています。その中核となるブランドが第三世代原発、CAP1400と華竜一号です。前者はAP1000の技術をベースとしたもので、建設費が安いのが長所。また、第三世代原発は第二世代に比べ寿命がほぼ倍の60年前後であることも取り柄となっています。これまで原発と言えば、ロシア、フランス、アメリカ、日本、カナダなどの先進国の独壇場でしたが、いよいよ中国もこれに伍してビジネスを展開し始めたのです。
その主要なターゲットの一つがアフリカ。中国広核集団は2015年、華竜一号をベースにケニアの原子力発電開発協力覚書に調印しました。同国は2033年までに4機の建設を予定しています。アフリカで唯一の原発所有国、南アフリカでは、2030年までに3機の建設を予定しており、2017年実施の入札に対し、中国も虎視眈々と受注の機会を狙っています。
各国の競争が激化する中、注目されたのが、同年7月に発表された、中国の原発開発会社2社(中国核工業集団と中国広核集団)がフランスのEDF(フランス電力会社)やアレバと提携を強化する、というニュース。もともと華竜一号も双方の共同開発によるもので、その効果はイギリス原発の受注でも発揮され、同年秋にはイギリスのヒンクリー・ポイントC建設共同受注がまとまりました(しかし、最近、EU離脱後のメイ新首相がこの決定の再考を示唆)。欧州では2016年もチェコやルーマニアで積極的なビジネスを展開しています。
中国は2015年8月にパキスタンで華竜一号式原発を完成、2015年11月には中国核工業集団がアルゼンチンと原発2機の建設に関する枠組み契約に調印しました。2016年1月には、中国核工業集団と中国広核集団が共同出資で華竜国際原発技術会社を設立、華竜一号を海外原発ビジネスの中国ブランドとして推進することで合意しています。