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第735回 供給側改革
(2016年9月5日)
今年上半期の流行語と言えば“供给侧改革”。2015年11月の中央経済工作会議が発端になり、同年12月、翌1月の人民日報掲載主要関連記事はそれぞれ8本、12本に上り、2016年にスタートした第13次5か年計画の柱の一つに、また、2016年春の全人代のキーワードになりました。“僵尸企业”(ゾンビ企業)という単語もしばしば見かけます。
2008年のリーマンショック以来、中国は国内消費の育成、公共投資、輸出の振興といった需要側の改革に力を入れてきましたが、今提起されているのは「供給側の構造改革」、すなわち、労働力・資本・資源・経済構造・技術・制度に関する改革です。これらを進める上で最大のネックになっているのが過剰生産力の淘汰。口で言うのは簡単ですが、実際に行おうとすれば、多くの複雑な債務を抱えた企業をどう淘汰するのか、就労者をどう再就職させるのか、といった問題が重くのしかかります。融資をしている銀行は倒産イコール回収不能を恐れ、延命策を講じてブラックホールに資金を吸い込まれ、その影響で、必要な企業には融資が回らない、また、企業城下町の地方政府が雇用不安を恐れ安易な救済策を行うこともこういったいわゆる「ゾンビ企業」の延命を助けているのです。
過剰生産の原因には、GDPの高成長が長続きすると信じてシェア拡大に走った企業の姿勢、シェアを伸ばしてライバルをつぶすことで生き残りを目指そうと生産を維持した暴走、そして、作った製品が、品質や分野において、急速に変化し成長する消費者のニーズについていけなくなっている、といった面などがあります。農産物に例えるなら、安い「富士」は売れ行き不振で3割安、その2倍もする高級リンゴは在庫が払底、といった具合。海外での爆買いもその一例です。
雇用などの確保を考え、吸収合併などの再編で局面を打開しようという動きもありますが、やはり、消費者のニーズに合わせた商品の開発とイノベーションがなければ根本的な解決にはならないでしょう。AIIBなどに頼った海外への余剰品販売も窮余の一策にしかなりません。
中央経済工作会議で打ち出された五大政策:①着実なマクロ政策 ②当を得た産業政策 ③活力あるマクロ政策 ④実のある改革政策 ⑤下支えする社会政策 と、具体的な五大任務:①生産能力の削減 ②在庫の一掃 ③金融リスクの防止 ④企業コスト削減 ⑤有効供給の拡大 の成否はまさしく今後の中国経済に行方を大きく左右することでしょう。