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第738回 海運業界再編
(2016年9月26日)
国有企業改革に厳しい視線が向けられている昨今、主要産業分野で上位企業合併の動きが相次いでいます。2015年には鉄道車両メーカーの中国北車と南車が合併して世界一の規模を誇る中国中車が、原発建設分野でも、国家核電技術と中国電力投資集団が合併して国家電力投資集団となり、中国核工業集団・中国広核集団との三強時代に突入しました。2016年9月には鉄鋼業界で宝鋼と武漢鋼鉄の経営統合し、欧州アルセロールミタルに次ぐ世界第二の鉄鋼メーカーが誕生、通信業界でも1月に中国電信と中国聯通が戦略的提携に調印しました。
こういった流れの中で実現したのが中国遠洋運輸と中国海運の合併です。近年の中国海運業の発展は目覚ましく、世界の港湾吞吐量では、トップの上海港以下、中国の港湾がトップテンの大半を占める状況が続いています。また、コンテナ輸送ではすでにアジアが世界の70%を占めていますが、そのさらに70%が中国になっています。しかし、こういった勢いも、最近の中国経済の低迷による原料炭や鉄鉱石の輸送量減少の影響を受けて陰りが出、すでに2015年夏にはコンテナ市場が大幅な運賃下落に見舞われ、中国のみならず、台湾の長栄海運や陽明海運、韓国の韓進海運や現代商船なども減益・赤字転落となり、日本郵船・商船三井・川崎汽船なども例外ではありませんでした。2016年2月にはバルチック海運指数が一時200を切る(1085年を1000として計算)事態にまでなり、加えて中国経済の発展を当て込んだ一時の造船発注ブームの結果、2016年もばら積み船・コンテナ船の新規就航が予定され、需給バランスの回復には程遠い状況です。
2015年8月、中国遠洋運輸と中国海運が合併に動き出し、12月に国務院国有資産監督管理委員会が発表、国務院の認可を受けて両グループの資産再編作業が始まり、2016年3月に再編内容が同委員会に承認されました。これにより船体総合輸送能力1114隻8532万トン、オイルタンカー輸送能力120隻1785万トンなど4つの世界一と、世界にコンテナ用46埠頭、190バースを擁し、コンテナ吞吐量9000万トン(世界第二位)という巨大企業が誕生したわけですが、市場からは厳しい目も注がれています。それは傘下の各企業の統合整理が、そのリソースや分野の複雑さから容易ではないこと、5万人もの人員の再配置、福利厚生の平等化実現も相当の困難が伴うからで、合併が所期の効果を速やかに実現できるかが危ぶまれています。