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第740回 不動産業の現状−その2−
(2016年10月11日)
中国の不動産市況を分析する際、よりどころとなるのが国家統計局による<70大中都市価格指数>。その新築住宅価格から2016年以降の価格変動を概観してみましょう。
2014年5月頃にバブル崩壊が顕在化した住宅市場も2016年初頭には回復し始め、春以降は70都市の80%以上で価格が上昇、4月には前年同月比で北京18.3%、上海28.0%、広州17.4%、深圳は何と62.4%増と、明らかにバブルの様相を呈し始めました。2015年夏からの株式市場の動揺や元安傾向への先行き不安もあり、株式投資や海外不動産に変わる運用先を求めた投資家が殺到したようです。その結果、70都市中65都市で価格が前月比上昇となり、省都クラスでは需要を先取りして住宅価格上昇前に土地価格が急騰する事態となりました。
その後、5月は北京・上海・深圳が市当局の住宅ロ−ン規制などで上昇が緩やかになったものの、厦門・合肥・南京などは4〜5%高と過熱、6月になってやっと住宅ローン規制などで上昇幅が縮小し始めました。ところが、8月になると全体で前月比1.2%とまた大幅に上昇、前年同期比では上海31%、北京24%の上昇を記録しました。一方で株式市場は年初から大幅に下落しており、到底実需を反映した数字とは言えず、投機の再燃が懸念されました。
では、政府はこの間、どういった政策をとったのでしょうか。2015年末の中央経済工作会議以降、「住宅市場の在庫一掃は国家的任務」という論調が盛んになりました。会議直前の11月時点で販売在庫は6億9637万㎡(前月比1004万㎡増)、しかも同年の新規建設中の面積は14億0569万㎡に上っていました。この状態を解消すべく、例えば2016年2月には中国人民銀行と中国銀行業監督管理委員会が購入頭金を20%まで引き下げることを可能にするなど、税制も含めた販売促進政策をとりました。これに伴い、地方では、政府が農民に不良債権につながる無理なローン販売を行う現象さえ現れていたのです。
2016年4月11日付人民日報は、18面全面で住宅市場問題を取り上げましたが、その<金海観潮>コラム欄は最後にこう指摘しています。「各地の状況は異なり、それぞれに応じた策を講じるべきだ。在庫量は?、地域分布は?、住宅のタイプ構成は?、人口は?、流動人口は?、将来の人口動態は?」と。地域によって産業構成・人口構成も異なり、GDP成長率にも大きな落差が生じた現在、至極当然の指摘と言えましょう。