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第744回 有給休暇
(2016年11月07日)
中国の<労働法>は1994年に公布され、その後<労働契約法><労働争議調停仲裁法><就業促進法><社会保険法>などが制定されたものの、<労働法>自体は20年以上も改定されず、時代の変化に対応しきれていません。2012年の一八全大会以降、改定機運は年々高まり、2015年3月の<労使協調関係構築に関する意見>では、勤労者の休息休暇権利を着実に保障することが盛り込まれ、同年初めに公布された<国民観光レジャー綱要2013-2020>でも、2020年には勤労者有給休暇制度の定着を目指すことが謳われています。
2015年前半にこういった動きが顕著になった背景には、経済発展が踊り場に差し掛かり、勤労者の権利の保障、福利厚生の充実が急がれること、3億人以上もの有給休暇取得対象者がその権利を行使することで消費を喚起できるという差し迫った事情があります。最近の政府調査では、有給休暇取得率わずか50%、それでも2014年にGDPに対する観光業の貢献率は10%強ですから、期待も膨らみます。同年7月には、国務院常務会議が各地方に有給休暇制度をさらに推進するよう重ねて要請、8月には<観光への投資と消費を一層促進することに関する若干の意見>が出され、有給休暇、時差休暇、2.5日小休暇の「三休暇」が奨励されました。
こういった動きは総じて歓迎されてはいますが、実際に休暇を取得するには様々な障害があります。第一に企業間格差です。有給休暇制度ができて7年余り、規定では、1年以上連続して勤務した者は毎年5〜15日の有給休暇が取れるのですが、2014年に国家統計局が陝西省で行った調査で、国有企業事業では80%以上が有給休暇を取得しているのに対し、労働者の80%以上が属する民間企業のうち、国内企業では50%未満、小企業以下ではほとんど実績がありません。有給休暇を取りにくい理由も幾つかあります。例えば、①雇用者の心証を害する ②長期休暇を取ればポジションを奪われる ③自分しかできない仕事を休めば、他人に迷惑が ④休んだ分、歩合給が減る ⑤休暇取得までの手続きが煩瑣、等々。それどころか、有給休暇制度があること自体知らない、という感想も少なくありません。2.5日小休暇も、週40時間という法定労働時間内でどうやりくりするか、工夫が必要で、弾力的運営が不可欠です。
とはいえ、すでに河北省・重慶市・江西省など各地で中央政府の方針に呼応した動きが出ており、それぞれの具体策の内容に注目が集まっています。