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第772回 農民の所得
(2017年5月29日)
「中国共産党成立100周年の2021年には、誰もが貧困を抜け出す全面的“小康社会”を実現、新中国成立100周年の2049年には、富強で民主的、また礼節があり調和のとれた近代的な強国を築き上げる」という「二つの百年の目標」を掲げる習近平政権。前者までの期限はあと4年ほどしかありません。そのため、ここ数年、鳴り物入りで貧困撲滅運動が降り広げられていますが、現状はどうなのでしょうか。農民の所得面から見てみようと思います。
農民の年収が1万元を突破した、と大々的に報じられたのが一昨年(2015年)末。食糧生産の12年連続の増加と、農村の土地制度や生産・経営方式の転換に支えられ、2010年比で57%増え、都市住民との収入格差も2.73:1にまで下がりました。同年、出稼ぎ農民の労働賃金も月平均で3072元と3000元を初めて超え、都市住民の増加率が6.6%であったのに対し、増加率7.5%と0.9ポイント上回りました。この二つの大台を突破した2015年の数字には一定の評価を与えてよいでしょう。ついでながら、同年に国家統計局が発表した全国民の年間可処分所得額5段階分類(一人平均)では、低レベル:5221元、中の下レベル:11894元、中レベル:19320元、中の上レベル:129438元、高レベル:54544元で、貧富の差が縮小したとは言うものの、ジニ係数は依然0.4を上回る0.462でした。
翌2016年は、農民の可処分所得は1万2400元で、都市住民との収入格差は2.72:1とほぼ変わらず、出稼ぎ農民の労働賃金は月平均3275元でした。この年の“農民工”の数は前年より424万人増加して2億8200万人に達しています。
全体的な数字で見れば収入増加は維持していますが、明らかに年々ペースダウンしてきており、解決すべき問題も少なくありません。農村が一品一村運動を繰り広げ、特産品を育て、ブランド化を進めて特色ある村づくりを目指すこと自体は間違っておらず、そうして成長した全国127の特色ある小さな鎮の収入は全国平均を三分の一も上回っています。その一方で、従来型の稲作に従事している農家は収入が伸びず、先行きが危ぶまれます。河北省を例に挙げると、田畑の水不足が深刻で、しかも田にかかる費用は工作から肥料・農薬・収穫に至るまでコストが上昇し、1ムーに800〜1000元はかかるとのこと(人民日報2016.2.16)。2ムーで出稼ぎ1か月分の収入にしかならず、田畑の放棄が続く深刻な事態に陥っています。