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第774回 京津冀発展計画の進展−その2−
(2017年6月12日)
京津冀の一体化には様々な壁を取り払うことが求められます。そのうえで、地域全体を覆うイノベーションチェーン・産業チェーン・資金チェーン・政策チェーンを形成して、中国経済の発展を推進する新しい経済ベルトを完成させるのが目的です。
政府はその土台として交通の一体化を第一に挙げています。2015年11月の<京津冀協同発展交通一体化プラン>がそれで、2020年までに、都市間の鉄道整備を主軸にハイウエー網を完備し、高速道路にすべての県都を網羅させ、港湾群・空港群を整え、北京・天津・石家庄の三大都市と周辺新都市・衛星都市間との1時間通勤圏、北京・天津・保定・唐山による1時間交通圏、隣接都市との1.5時間以内の接続を実現するとともに、従来の北京を中心とした放射状の交通網を、全国各地と交通システムを共有する「四縦四横一環」と称されるネットワークに発展させることが盛り込まれています。
三地域の提携は様々な分野に広がっています。交通ではETCの共通化やバス乗車カードの域内6都市共用が図られ、医療の一体化では、医療リソースの交流・共有の試みが始まっています。諸手続きの一本化も進んで、異なる地域での身分証の申請や交換が可能になり、医療費支払いの融通性も進み、複数金融機関共通のカード(“農銀通”)も2016年9月に発行されました。水や大気の汚染といった環境問題の取り締まり協力や、治安維持のための警務一体化も図られています。
最高人民法院は2016年2月に<京津冀協同発展への司法上のサポート及び保障に関する意見>を発し、「非首都機能引き受け重大プロジェクト建設を妨害する犯罪を法に則り処罰する」と表明しました。これは何を意味するのでしょうか。その前年、2015年4月に、北京で京津冀鉄鋼産業エネルギー節約排出削減産業技術革新連盟が設立され、70社余りが参加しましたが、その目的が鉄鋼業のアプグレードと、それによる大気汚染防止にあることは言うまでもありません。京津冀協同発展の主目標の一つが北京市の肥大化抑制であり、第13次5か年計画では北京市の人口を最大で2300万人に抑えるという上限が示されました。これを踏まえて提起されたのが、非首都機能の北京市からの移転と、北京市通州区に行政副都心を建設するプランです。その内容についてはまた次回に。