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第780回 日中関係2016年の回顧−その2−
(2017年7月24日)
こうした動きに経済界も呼応し、9月には経団連の榊原会長、日本商工会議所三村会頭、日中経済協会宗岡会長らによる経済界三団体連合団が訪中、張高麗国務院副総理と会見し、両国関係の改善について協議しました。その後、11月には石国土交通大臣が訪中、国家旅游局との間で<観光交流協力の更なる強化に関する覚書>を取り交わしました。
一方で、過去の問題に関する記事も盛んに取り上げられました。前年の安全保障関連法案の成立や2016年4月の安倍首相による靖国神社への玉串料の奉納もその要因であることは明白で、2016年3月には北京中国劇院で音楽劇『烽火・洗星海』が上演されました。また、複雑な日中韓関係を反映し、従軍慰安婦問題に絡めた非難も急増、更に8月には防衛白書における中国脅威論が反発を呼び、その後は年末の南京虐殺記念日に至るまで、重慶爆撃の問題や東京裁判の正当性など、関連行事の有るごとに多くの記事が掲載されました。
では、日本そのものに対する記事にはどんな特徴がみられたでしょうか。これまでと聊か異なるのは、日本が抱える問題点を様々な角度から取り上げた記事がこれまでになく増えたことです。政治面では安全保障関連法絡みで安倍政権の憲法改正問題が国論の分裂を生んでいること、軍事費が増大していることなどのほか、福島原発事故のその後の汚染処理の不手際にも関心が集まっています。社会問題では若者世代の低収入と社会保険の落差の問題、凶悪事件の頻発、政界の腐敗なども取り上げられました。
国際関係では、当然のことながら尖閣問題と南シナ海問題に関する反発が大きな比重を占めました。外交部スポークスマンに関する記事では「日本は南シナ海問題でつべこべ言う資格はない」「あれこれ指図するな」などと言う直截的な見出しが躍りました。9月には、40期余りの空軍戦闘機が遠洋運用能力の試験飛行で宮古海峡を通過した記事が紹介され、西太平洋への進出と東シナ海防空識別圏パトロールの常態化が目的であることも明らかにされました。また、11月には220の資料が収録された、精華大学劉江永教授による『釣魚島帰属考:事実と法理』出版記念セレモニーが同大学で開催されました。
このほか、5月の安倍総理のロシア訪問に関しては。日本側が8項目の経済協力を打ち出したものの、何一つ合意には至っておらず、大きな進展は望めない、と分析しています。