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 第781回 日中関係2016年の回顧−その3−

(2017年7月31日)

経済面でも30本を超える日本経済関連記事はすべて悲観的な見方に終始し、そのうち約半数が“安倍経済学”「アベノミクス」という語をタイトルに挿入しています。
日本の社会や文化に対する記事は、政治的逆風が強く吹いた時期を除き、日本に学ぶといった記事が多数を占めていましたが、2016年はどんなテーマが取り上げられたのでしょうか。
行政面では、一極集中から地方分散を目指す動きに立ちはだかる障害が紹介されました。経済関係では、若者の消費不振と「断捨離」、農業の人口減少と自給率低下が、社会保障では、人口の高齢化と、商業老人ホームが高額なため在宅ケアが主になっていること、子供の託児所難、児童の貧困化が挙げられ、その他の社会問題として、女性の就業促進が不十分なこと、自殺多発社会であることが、さらに、結婚後の姓の変更の是非に関する問題も紹介されました。これらの問題は、当然ながら、そこに中国が抱える問題の投影が少なからずあります。一極集中問題は、今中国政府が鳴り物入りで進めている京津冀経済圏の取り組みと密接に絡みますし、農業問題、社会保障問題などいずれも日中に共通した課題であります。その意味で、これらの記事は、上述の政治経済関係記事とは趣がかなり異なり、冷静かつ客観的に日本の現状を分析したもので、むしろ日本に対する見方の成熟さを感じさせます。
日本に学ぶ記事もほぼ同数掲載されました。日本の進んだ科学技術では、ロボットによるバリアフリー社会の構築、APPによる赤ん坊の泣き声解読技術、スマートシティ先端技術、ネットを使った農業産業化特産化の推進が、環境問題では、建築廃棄物の回収再利用や<21世紀環境立国戦略>における緑色製品への取り組みが、防災関係では、静岡県の県を挙げた取り組みが紹介されました。教育面では、今まさに中国が全力で取り組んでいる基礎教育の公平化について、日本の状況が紹介されました。
文化面では、醍醐寺芸術珍宝展に因んで“唐密 空海 醍醐寺”と言う大がかりな記事が掲載されました。日本の伝統技術では、日本の筆の都として熊野を詳しく紹介した記事、また、蒔絵師平野雄一氏に取材した日本の蒔絵工芸に関する一文も読みごたえがありました。
伝統技術の継承に躍起になっている中国を反映していると言えます。このほか、岡倉天心の『茶の本』を通して日本の茶文化の発展を紹介した記事も秀逸でした。

三瀦先生のコラム