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第785回 二人目の子供狂騒曲
(2017年9月4日)
2015年12月31日、<二人っ子政策の全面実施と計画出産業務管理の改革整備に関する党中央・国務院の決定>が出された中国。この方針転換にどう対処するのか、2016年は様々な問題点が指摘され、様々な反応がありました。年明け、同年1月8日付人民日報は早速この問題に対する専門家の提案を手際よくまとめた記事を掲載しました。その中で、若年結婚出産抑制の撤廃に対しては、従来の若年結婚出産抑制のマイナス点として、①結婚年齢の上昇による婚前妊娠、堕胎の増加。②出産年齢の上昇(実質初産年齢25-27歳)による不妊と障害児出産の増加。を挙げつつも、二児目の出産養育に関しては、①養育費の負担が大きすぎる。②共稼ぎで核家族の場合、子供の養育に手が回らない。などの問題を指摘しています。
また、理想的な子供の数は全国平均1.93人、農村2.1人、都会1.8人で、しかも農村からの流動人口の70-80%が都会に流入していることを考えると、これらの対象を受け入れる都市の環境整備は待ったなしだ、とも指摘しています。
ハードでの対策の他に、ソフトでも問題が指摘されています。まず、親の問題。二人目を生む世代はほぼ一人っ子。親自身が兄弟に揉まれて育った経験がなく、どう子供を教育したらいいのか戸惑います。子供の方にも問題があります。“小皇帝”と呼ばれて育った親から生まれた一人っ子は“小太陽”。周囲のすべての大人の慈愛と期待を一身に集めて育っているため、突如現れた“侵入者”に対する様々な拒否反応が現れています。これに対し専門家からは、① 両親が「弟妹がいるのは良いことだ」と積極的に考えられるよう仕向けること。②上の子の成長のカギとなる重要な時期を避けての出産が望ましい。とのアドバイスも。
気が早いようですが、遺産相続問題もホットな議論に。子どもが二人となれば相続問題が複雑になります。両親の遺言がなければ法律によって相続が行われますが、トラブルを避けるためには、生前遺言によって個人財産の処分方法を決め、併せて遺言執行人を指定する必要も出てきます。第二子の財産権をどう保護するか、をしっかりしないと、将来、中国全土で、兄弟姉妹の間の相続トラブルが発生しかねません。
根本的な問題は、国民が自由に各地を移動する時代に、ハードにせよソフトにせよ、地域によるばらつきを無くし、どこでも平等且つ継続的サービスが受けられることでしょう。