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第801回 貿易の現状と課題—その1—
(2018年1月5日)
2017年11月4日に閉幕した広州交易会。契約額は前年同期比で8.2%増と回復が鮮明になり、2016年春以降前年比で4期連続上回ると同時に、春と秋を順に並べても4期連続前回を上回りました。その前は2013年秋以降2015年秋まで前年比で5期連続下回ると同時に、春と秋を順に並べても5期連続前回を下回っていたわけですから、回復傾向が鮮明になった、と言ってもよいでしょう。
ただ、その理由を探ると必ずしも今後を楽観できるわけでもありません。2017年秋の党大会を踏まえた政治情勢からの要請に応えて施されたインフラ投資は2017年以降の経済・貿易回復の主因の一つに数えられますが、党大会を終え、習近平政権の地盤が固まった後もそのままの規模でインフラ投資を持続すれば、“转型升级”(モデルチェンジとアプグレード)をテーマに掲げる“新常态”(ニューノーマル)を推進する政策と矛盾します。実際、痛みを伴う経済体制改革を辞さない姿勢の下、地方のインフラ整備や上動産バブルの抑制、国有企業の本格的改革と巨額の海外投資の抑制、厳しい環境基準の適用などが始まっていますし、また、輸出競争力維持の為の賃金上昇の一時的抑制も長く続けることは鳴り物入りの貧困救済に反することになります。しかし、これらの政策が中国経済、ひいては輸出入に与える影響は無視できません。その一方で、二つの100年目標のうちの一つ、2021年までに「全面的な小康社会を実現すること《、「GDPと都市住民一人当たりの所得を2010年の倊にすること《はすでに具体的な公約として掲げられている以上、なんとしても実現させなければなりません。2020年は第13次5か年計画完成年であり、もし、その時点でこの数値を達成できなければ、習近平の権力基盤が揺らぎ、2022年の党大会でその絶対的に優位な権力体制を維持できるかに黄信号が点ります。
今回の交易会での復調のもう一つの主因はアメリカの好景気による購買力の増加。しかし、トランプ政権は、対中国貿易での巨額の赤字を問題にしており。貿易交渉の行方によっては上確定要素が生じる可能性も否めません。
以上のような様々な要素が交錯する中で、何が大切かと言えば長期的な視野に立って、戦略的に貿易構造の改善を図ること。その面での政府の具体的な取り組みについては次回に。