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第808回 中国医学、最近の動向—その2—
(2018年2月15日)
中医薬産業の宿願ともいえる<中医薬法>の成立ですが、その中でなにより重視されたのが第四章に掲げられた中医薬人材の育成です。中医薬人材は従来、ほとんどが一定の臨床経験の蓄積によって育成され、その技術は師弟相伝、父子相伝によって継承されてきました。しかし、それだけでは医師の資格認定には不十分です。そこで<中医薬法>は上記のような事実に依拠しつつ、医療の安全という観点をも踏まえ、それらの中医薬医師に対し、技能実践能力と治療効果試験を通して中医薬医師の資格を手に入れる新しい道を切り拓きました。また、資格を厳密に審査する一方、行政による管理方式を改め、従来の許可制度を届け出制にし、街でも気軽に相談できるようにして利便性を高め、大衆レベルでの健康管理の普及を推進することにしました。
もう一つ注目すべき点が第三章の中薬の保護と発展です。中国医学の発展に必要な中薬の供給には、薬材の確保、産業の育成など課題が山積しています。2015年4月、国務院は中薬の資源確保と当該産業の発展に関する初めての総合計画である<中薬材保護・発展プラン(2015-2020)>を発表し、七大任務を掲げました。その背景には経済発展・環境破壊による野生薬材の減少や、生産量を追い、質を軽んじたことによる農薬・化学肥料、各種添加剤によるダメージがあります。具体的には全国の県レベル薬材生産地区の80%を網羅するモニタリングネットワークを設け、また、約100種類の野生薬材を人工栽培し、中薬産業に対しても、原料の50%は産地が指定されたものを使用すること、上位百社は主要原料の基地化率を60%にすることなどを盛り込みました。
中薬産業育成のもう一つのポイントは、市場を外国企業に席巻されていること。上記2015年時点で、国際的な中薬市場において中国の輸出額が占める割合は、2001年の3.6%からさらにダウンしてわずか2%に。日本・韓国・インド・タイなどの遥か後塵を拝していました。当時その原因の一つとしてやり玉に名がったのが国内の厳しい新薬認定基準。これが障害となって、その前年2014年の認定新薬中、中薬はわずか2%にすぎませんでした。「日本は基準を緩和し、我が国の『傷寒雑論』に則り210種の漢方薬を生産、国際市場の80%を占め、中国の金のなる木で儲けている」と日本に対する対抗心がむき出しです。