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第810回 香港の動き
(2018年3月8日)
ほぼ1年前の2017年3月26日、香港特別行政区第5代行政長官に林月娥が当選、同31日に国務院により承認され、2017年7月1日から2022年6月30日まで5年間行政長官の職務を担うことになりました。この行政長官選出方法について中国政府に対する激しい抗議が起こり、2014年、それが「雨傘運動」に発展したことは周知のとおりです。これに対し、中国政府は翌年の香港基本法発布25周年に際し、基本法は中国の法律であり、国家の観念が大前提にある事を強調し、2015年4月22日に行政長官普通選挙方案を提示、この方式に則って今回の選出を実行しました。これに合わせ、人民日報は2015年6月に基本法起草委員会のメンバーたちによる大キャンペーンを掲載してその正当性を主張、香港ではその後も2016年に、書店店主拉致事件や旺角での騒動、立法院選挙における“港独”派当選議員の宣誓拒否に対する議員資格はく奪など様々な動きがあり、香港返還時にカナダへ大量移住があったように、一部の香港人の間には台湾へ脱出しようという動きも出ています。
香港が近現代史における特殊な背景から独自の文化的特性を育み、改革開放のプロセスにでは経済的側面において貴重な橋渡し役を演じてきたことは、一国2制度といういかにも中国人らしい融通性からも明白ですが、珠江デルタ経済圏の発展とともにその相対的価値が薄れつつあり、2015年の<中国都市競争力報告>では深圳に抜かれ、第2位に転落しました。香港が国際都市として更なる発展を目指すには新たな位置づけが不可欠になります。
香港凋落の原因はイノベーション力に欠けていることにあります。これまで研究開発にGDPの1%も投入しておらず、深圳と比べてもその4分の一にしか過ぎなかったのです。
2017年、科学技術部は香港を北京・上海に続く国家レベルのイノベーションセンターにすると同時に、その独自性は世界と内地を結ぶ「国際化」イノベーションにある、という考えを示しました。香港では、世界と内地を結ぶ、というその特性を生かせば、一帯一路政策とも大いに連動できる、と期待しています。