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第816回 2018年春の全人代
(2018年4月26日)
2017年秋の19全大会で政治局常務委員25人中15人が交代し、それまで胡錦濤派の共産主義青年団系が大半を占めていた顔ぶれは、過半数を習近平派が占める体制に変わりました。この勢いに乗り、翌2018年1月には党の19期2中全会が開催され、「習近平思想」即ち「新時代の中国独自の社会主義思想」を憲法に明記することが確認され、たて続けに2月の3中全会で党と国家機関の改革を深める方針が採択されました。本来、3中全会は党大会の翌年秋に開催されて、今後5年間の大方針が示される会議で、これが2中全会後直ちに開催されたことは極めて異例であり、直後に控える全人代での人事を牛耳るための電光石火の早業である事は明白です。
3月に開催されたその全人代では、習近平の盟友、王岐山を国家副主席に、副首相には、筆頭副首相に江派・胡派とのバランサーである韓正政治局常務委員を据え、副首相には習派の孫春蘭と習近平の経済ブレーンである劉鶴に加えて、共青団系の胡春華を据えました。李克強首相も共青団系であり、絶妙なバランス人事と言えます。
さて、こういった状況下で開催された全人代の政治報告の中で李克強首相は、2018年の目標としてGDP成長率6.5%、都市での新規就労者1100万人以上を掲げると同時に、所得の伸び率と経済成長率を同率にするとしました。これは、2000年ごろの、経済は成長するものの、所得の伸びがそれをはるかに下回ったことによる諸問題の発生への反省と言えるでしょう。また、都市部の調査失業率と登録失業率についてそれぞれ5.5%以内、4.5%以内と分けて数値目標を設定したことは、農民出稼ぎ労働者の数値をきちんと把握し、対策を講じようとする具体的取組姿勢を示しています。
財政政策では、依然積極的な財政政策は採るものの、対GDP比の財政赤字は2.6%に抑え、その中で、地方、特に中西部へ重点的に資金投入する方針を示しました。これは、これまでの地域発展計画の進展に沿ったもので、全国主体機能区計画の遂行と表裏一体を為しています。報告では更に、供給型構造改革、イノベーション型国家の建設、民営企業の発展や財産権の確立、財税・金融体制の改革、環境問題、貧困対策など多岐にわたる提案をしていますが、それらはこのコラムでまた逐次取り上げていきましょう。