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第819回 転機を迎えた銀行業界
(2018年5月17日)
近年の民営銀行やネット金融の発展につれて、これまでこの世の春を満喫してきた従来型銀行がきびしい試練に直面しています。これまでの経営感覚とサービスレベルが壁にぶつかっているのです。このような情勢が顕在化したのが3年前の2015年でした。金融改革が進み、預金金利が開放されたことで、政府が保障していた貸付金利との格差で居ながらにして確実に利益を確保できた左団扇の時代が終わりを告げました。また、民営銀行も5校が認可され、従来にない新しい運営モデルも導入され始めました。これらについては既にこのコラムでも詳しく紹介しました。同年5月、市場化を進める中、金融のセーフティネットを整えるべく<預金保険制度>が正式にスタートし、リスク管理にも厳しい要求が突きつけられました。一方、国家開発銀行・中国輸出入銀行・中国農業発展銀行という政策銀行三社に対しては抜本的な改革案が提示され、より公共性に重点を置くよう方向性が示されました。
こうした流れの中、翌2016年、従来の銀行はさらに厳しい現実の直面しました。支払業務は“支付宝”に、人材は新興金融機関に、融資利益はネット金融に、と伝統的なビジネスアイテムを新興金融サービス機能・機関にどんどん浸食され始めたのです。2016年末になると、個人資産を銀行に預け入れている割合が20%以下の人は65%近くに達し、カードで支払いをする人や銀行を主たる理財手段とする人の割合は50歳以下ではいずれも30%未満に落ち込みました。
2017年に入ると、前年末の中央経済工作会議の方針を承け、銀行改革は政府が全面的に推進している供給側改革の一環として捉えられ、銀行業が虚業を脱していかにして実体経済をサポートするか、について論議が集中しました。その中の問題の一つが銀行の不良債権問題です。生産能力過剰で設備淘汰が必要な企業、既に死に体でありながら様々な思惑で資金注入して生きながらえている国有企業(ゾンビ企業)、旧態依然とした非効率経営企業に対し、銀行は様々な理由から多額の融資を継続し、その結果、不良債権が膨らんでしまいました。このような状況に対し、2017年4月、銀行監督管理委員会は実体経済への回帰を強く打ち出す指導意見を出し、併せて25件の行政処罰を決定、また17銀行に対する処分を発表しました。その後の動きについては、またの機会に。