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第820回 東北、再起へ向けて—その1—
(2018年5月24日)
一カ月余り前、2018年4月2日の人民日報に“農村の振興に力を入れて、遼寧の旧工業基地を全面的に進行させる支えとしよう”という同省の陳求発書記署名の記事が掲載されました。遼寧省の旧工業地帯の低迷は東北経済低迷の象徴であり、これへのテコ入れがここ2年始まっていましたが、この記事のような観点からの披歴は多くなく、まずその内容を紹介したうえで、ここ2年の取り組みを紹介しましょう。
タイトルからもわかるように、陳書記の観点の特徴は、旧工業地帯の振興に農村の振興が欠かせない、両者が一体となって初めて旧工業地帯の真の振興が可能になる、というところにあります。その具体的内容として4つのテーマが掲げられています。
第一は、質の高い、環境に優しい農業を育成し、遼寧省を国の重要な現代農業生産地にすることです。もともと、同省は国の13の主要食糧生産省の一つですが、その中で、量から質への転換を促進しよう、有機農業を育て、産業化・ブランド化を推進して農業・牧畜業・漁業を結び付け、これらを単なる第一次産業から、第一、二、三次産業が合体した近代的農業システムへ転換させようというものです。同記事でも紹介されているように、遼寧省ではすでに<遼寧省現代農業生産基地建設プロジェクト枠組み方案>が制定され、農業関係のインフラ整備、現代農業モデル地区や農産物加工集中区の設置、農業ブランドの創設、新技術・新品種の普及など7つのプロジェクトが進行しています。陳書記はその中で、2020年には農業で年率3.5%の成長を見込み、工作機械化率を80%に、科学技術貢献率を64%に、農村への情報カバー率を95%に、さらに2030年には遼寧省を国の重要現代農業生産基地にする、という意欲的な目標を掲げています。
第二は、地域が協力し合い、都市と農村が融合し、工業と農業も一体となった新しい協調発展モデルを創り上げることで、同省ではすでにそのために五大地域発展戦略が制定されたことが紹介されています。その中の一つに県域経済の加速度的発展が挙げられていますが、そのコンセプトは“一県一業”、“一園一区一鎮一品”です。
第三は、様々な改革の深化で、主な項目としては土地制度、財産権制度、県や郷の財政体制、村の集団経済などが挙げられています。次回はここに至るまでの経過を振り返ります。