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第822回 日進月歩、農業の科学技術化
(2018年6月7日)
貧困撲滅に総力を挙げている中国政府にとって、農村の近代化と生活の向上はまさに主戦場。伝統的な素朴な農業形式を転換し、市場を見据えた産業化を図るには、科学技術の導入による品種改良や栽培方法の改善、更に販売ルートの整備と輸送システムの確立が欠かせません。以前にもこの欄で農業の科学技術導入について触れましたが、その後の進展ぶりと問題点をチェックしてみましょう。
科学技術と言えば、まず、機械化が話題になります。2017年春、全国で投入された農業機械は680万台に達し、「総合機械化率は65%を超えた」と発表されました。耕作、苗の植え付け、収穫、乾燥など、機械化の穀倉地帯への貢献は図り知れません。また、ドローンが急速に普及し、農薬や液肥の散布への応用に関するニュースがひきも切りません。畑にビデオカメラを取り付け、遠隔操作で病虫害などを監視するシステムの導入もあちこちで始まっています。江西省贛県の国家現代農業モデル地区では、300余りのセンサーと800余りのカメラを18の農業生産地に配置し、各種データを採取しています。
中国西北部の乾燥地帯では科学技術が更なる力を発揮しています。マルチング技術の発達は、10年のうち9年は旱害に遭うと言われていた甘粛省にここ5年以上、連続して豊作をもたらしています。同省は耕作地の70%が乾燥地で、乾燥・半乾燥地域に80%以上の農村人口が生活しています。しかし2007年、同省は独自のマルチング技術を全省に普及させ、以来、年々その成果を向上させてきました。新疆のトルファンでは、砂漠の中に一面の水稲の畑が広がっています。地下水を使っているのですが、フィルムを使って効率を高め、同じ面積でも特産のブドウの四分の一の水で栽培しています。とはいっても、過去、汲み上げすぎで地下水系がズタズタになった苦い経験があるので広範な普及にはまだ慎重です。
そうした中、日本などでも行われている、土壌を使わない水耕栽培や、LEDを使ったスマート工場の研究も進んでいます。2013年、国は<スマート化植物工場生産技術研究>を正式に“863計画”に取り上げ、15の研究機関・教育機関・企業が合同で開発に取り組むことになりました。1986年3月に始まった中国の基礎研究への取り組みは通信技術など様々な分野で成果を挙げており、その中に取り上げられた意味は大きいと言えましょう。