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第824回 大学教育の変貌—その2—
(2018年6月21日)
中国の大学では主要大学のことを重点大学と言います。中国政府は1998年5月、世界に通用する一流大学を建設しようと<985プロジェクト>を作動させ、2010年には国務院から<国家中期教育改革、発展プラン綱要(2010-2020)>が、教育部などから<世界一流大学およびハイレベル大学建設に関する意見>が提起され、2011年までに39校を指定して、選定を終了させました。これと前後して進められたのが「21世紀に向けて100の優れた大学を育もう」という<211プロジェクト>で、2009年には112の高等教育機関がリストアップされていましたが、この選抜も2011年で終了、2016年にはこれらを発展的に解消して、新しい革新的な学科や特色ある重点的な学科の建設をも加味した<世界一流大学、一流学科建設>計画がスタートし、2017年以降は“双一流”と言う言葉がしばしば紙面に登場するようになりました。
2015年にイギリスのタイムズが発表した世界の大学ランキングには清華大学が18位、北京大学が21位にランクされるなど、5校がランクインしましたが、2016年に開催された70余りの大学の学長・書記による<2016大学学長フォーラム>で発表された<2015-2016中国の大学の社会的影響力ランキング>のベストテンは①北京大学 ②清華大学 ③武漢大学 ④浙江大学 ⑤復旦大学 ⑥上海交通大学 ⑦中南大学 ⑧中国人民大学 ⑨南京大学 ⑩四川大学。では、そもそも何をもって一流大学と認定したのでしょうか。
同フォーラムの学長たちの発言では「品徳を具えた質が高いイノベーション型人材の育成」が挙げられていますが、それだけでは具体性がありません。黄進中国政法大学学長は、人材育成度、科学研究能力、教員の質、国際協力、学術的成果といった国際的な評価項目以外に、民族教育・国学教育・価値観教育など中国独自の基準を加味する必要がある。言い換えれば、中国独自の文化伝統、理論体系・発話形式・人文社会科学をどう加味するかで、例えとして、マルクス主義理論と中医薬学を挙げています(2016.5.5人民日報)。この提示は、今後の中国がどういう道筋を通ったら世界の一流大国になれるのか、世界的基準に中国独自の「中国基準」を如何に導入するのか、に関わる事ですが、テーマとしてまだまだ十分に咀嚼されているとはいえず、さらなる議論の深まりが不可欠でしょう。