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第825回 中台関係あれこれ

(2018年6月28日)

 2018年5月20日、新華網が台湾・台東県のパイナップル栽培農家の「惨状」を伝えました。民進党政権誕生後2年が経ち、両岸関係が悪化したことが台湾経済に深刻な打撃を与えている実例として紹介したのです。それ以前、9割が大陸向けに販売されていたのが滞り、値段も以前の半分以下になったとのこと。勿論、大陸からの観光客も大幅に減り、2015年には延べ418万人が訪れていたのが、2017年には延べ273万人に減少しました。
2016年1月の台湾総統選挙で民進党の蔡英文氏が当選すると、国務院台湾事務弁公室はすかさず「九二共識」(<1992年合意>。“一つの中国”を確認)の堅持を求め、習近平も3月の全人代で両岸関係が重大な岐路に立っていることを強調、「基本線をしっかり押さえ、強調して発展し、事を荒立てず将来を見据えよう」と呼びかけました。
その後の動きは、まさに硬軟取り混ぜたもので、政治的には「九二共識」堅持を大前提として掲げ、WHOなど国際機関からの締め出しや台湾を支持していたパナマなどとの国交樹立によりその外交的孤立化を図る圧力を強める一方、2016年9月には台湾の8県の首長の訪問団と北京で交流、11月には国民党洪秀柱新主席を北京に呼び、両党の絆を強調し、同時に、その共通のアイデンティティである孫文の思想を研究する学会も開催されました。経済や民間交流でも積極的な懐柔策がとられ、同年4月には、浙江省の国際的卸売市場、義烏と台北との間に直行便が開通、“一帯一路” 建設への台湾企業の参加も積極的に呼びかけられ、2017年になると、台湾“一帯一路”経済貿易促進協会も成立ました。
大陸側にとっても、台湾との経済関係は無視できるものではありません。例えば広西チワン族自治区への台湾企業の投資総額だけでも、2年前の2016年に既に100憶ドルを越えていますし、IT関係の産業リンケージだけを見ても、互いに密接なつながりができています。2017年5月、中国政府は、台湾住民の就職テスト地区として、既に開放済みの6一級行政区(福建、江蘇、天津、上海、浙江、湖北)に加え、更に6地区(北京、華北、山東、広東、広西、海南)を追加しました。また、2018年6月28日3月には台湾に対する<31条の優遇措置>を発表して融和攻勢を仕掛けました。そこにはトランプ政権との距離を測りかねている蔡政権に対する積極的な揺さぶりと言った側面も垣間見られます。

三瀦先生のコラム