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第832回 海南省の発展とその意味-その2-
(2018年8月15日)
海南省の目玉は観光業で、前述の如く国務院は既に2009年12月に<海南国際観光島建設発展推進に関する若干の意見>を出し、本格的なリゾート観光地の建設が始まり、2017年には観光客受け入れ数が延べ6745万人に、国外からの観光客も100万人を突破しました。こうした中、同省は幹線ハイウエーの観光向け改造を積極的に推進し、島内一周観光ハイウエーや熱帯雨林国立公園一周ハイウエー、遊覧ハイウエー網の建設に着手しています。最近打ち出された<海南省交通運輸発展三年行動計画>では、2020年までに省全体の高速道路を1360kmに増やすとともに、農村交通ネットワークの構築・整備を進め、農村自動車道路の100%舗装化と100%自動車道路開通を実現し、貧困撲滅の条件を整備することを謳っています。その農村の貧困撲滅では、道路網を含めた五網(道路網+水、電気、天然ガス、光ケーブル網)の建設が精力的に進められ、既に光ケーブルと4Gネットワークは全省2573の村をカバー、全島を網羅する天然ガスパイプライン建設も着工されました。
リゾート地としての付加価値を高めるため特に力を入れているのが医療観光。海南省を訪れる観光客の90%が医療面のサービスを、57%が定年後に毎年少なくとも3カ月同島に滞在することを希望しています。そこで同省は<民間資本の医療機関設置奨励に関する実施意見>と<海南省健康サービス産業発展促進実施プラン(2015-2020年)>を打ち出しました。国務院が2013年に国内初の国際医療観光パークとして認可した海南博鰲楽城国際医療旅游先行区には続々と様々な先端医療健康プロジェクトが集積されつつあります。
海南省の発展に中国政府が力を入れるのには、別の理由もあります。2018年4月、習近平は南シナ海で海上閲兵を行い、世界一流の海軍を建設する決意を示しました。5年前の2013年4月、習近平は同島を訪れ、海上民兵と称される漁民たちをねぎらっています。海南島は南シナ海の領有を主張する中国にとってまさに要の位置にあり、同省を発展させることは南シナ海問題と密接に関係します。また、同島を台湾に負けない経済体とすることで東アジア地域における台湾の相対的独自性を淡化させ、大陸への依存度を深めさせ、ちょうど香港が深圳の発展でその独自性を弱め、大陸側に吸収されようとしているような手順に持ち込もうという深謀遠慮も察せられます。