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第833回 労働環境改善への取り組み-その1-
(2018年8月23日)
中国で労働問題と言えば、毎年必ず一番問題になるのが労賃の欠配。人民日報でも、春節前には、労働者たちのためにこんなにたくさんの未払い金問題を解決した、という記事が目白押し。その記事数は他の労働問題の総和に等しいと言っても過言ではありません。業を煮やした政府は2016年11月から年明けの春節前まで、12の部や委員会が合同で全国規模の労賃支払い状況の検査を実施したほどです。なぜ、いつまでたってもこの問題が解決されないか、様々な要因があります。企業の経営状態が悪くて払うに払えない、というのは別として、孫請けまた孫請けといった形態で発生する中間搾取や、建築労働などで多い「完工までは基本的生活費のみ支給し、労賃は完工して建築費用の支払いを受けてから支給する」という方式で、建築費を支払ってもらえるまで、そのしわ寄せが労働者に及んでいる場合、また、更に根本的な問題として、数百万元、数千万元未払いでも罰金は2万元以下という法的拘束力の欠如などが挙げられます。
2017年5月、武漢で開催された“全国建築労務用工研討会” で全国建築労働者実名制管理プラットフォームが正式に設定されました。このプラットフォームは建築労働者の出入り・勤務評価・給与支払いなどの情報をリアルタイムで記録、トラブルが生じた際に証拠として関係機関に提出し、労働者・企業双方の合法的な権利を守ろう、というものです。
労働に対する違法行為は多岐にわたりますが、現在中国で問題になっている主要な労働保障違反については、2016年7月に政府が8項目を提起しています。それによると、①労働報酬の欠配 ②法が定めた社会保険に加入していない ③少年工の違法な採用 ④労働時間・休息時間の違反 ⑤女性労働者・未成年労働者特殊労働保護規定違反 ⑥関係機関の処罰対象となる行為 ⑦上記のような理由から引き起こされた30人以上の集団争議 ⑧法律法規で規定されたその他の重大行為 となっています。
それとともに、政府は<企業労働保障順法信用ランク評価規則>を2017年1月1日から実施しました。企業をA~Cランクに分け、Aランクには政府機関によるチェック回数を減らし、Bランクには回数を増やして改善を督促し、Cランクには日常的に厳しくチェックするとともに、責任者から事情聴取をする、というものです。