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第835回 労働環境改善への取り組み-その3-
(2018年9月6日)
定年延長問題をもう少し詳しく見てみましょう。中国の労働人口は2011年にピークの9.25憶人に足し、その後、減少し始め、2015年は9.11憶になり、2030年には8.3憶、2050年には7憶前後と推定されています。こういった労働力の減少に対する対策として定年延長が検討されているわけですが、急に延長したら若者の就職難を招来するのでは、という危惧もあります。これに対し、政府は以下のように反論しています。①我が国の法定退職年齢は男満60才、女満55歳だが、職種別その他さまざまな要因で、現在の平均退職年齢は54歳前後、その一方で平均寿命は78才、都市部では80歳に達しており、これでは資源の無駄遣いである。②日本や韓国は定年延長から実施まで13年もかけており、徐々に進めることでその間に様々な対応策を講じることができる。③新産業革命の中、若者の就職先は高年齢者の職場と競合せず、定年延長が若者の職場を奪う割合はそれほど高くない。中国の労働者にとって差し迫った問題の一つが失業保険です。現行の失業保険は都市住民の最低生活補償基準以上かつ現地最低賃金以下となっていますが、最近各地域のこの額の上方修正が続いており、例えば、河北省では2017年から、最低基準が従来の650元から940元に引き上げられました。失業保険を受けるには、所属組織と本人が1年以上規定通りに保険費を納入していること、本人の希望で離職したのではないこと、失業登録をし、なおかつ就職を希望すること、が条件になっています。企業合併による合理化、過剰生産能力や旧来型産業の淘汰による失業者の一時的受け皿としての失業保険の拡充は、調整経済期の段階では必要不可欠です。
2017年に入ってから目につくのが労災対策。政府は<国家職業病防治プラン(2016-2020年)>を打ち出し、2020年には雇用者側が責任を負い、行政が監督し、業界が自律的に取り組む枠組みの構築を掲げました。主な8項目を見ると、①塵肺や化学性中毒に重点を置き、鉱山・非鉄金属・冶金・建材などの分野に力を入れる、②職業衛生管理に関する企業などのブラックリストを作成、③労災保険・医療保険の充実など様々な救助を展開する、などとしています。この他、地球高温化に関連した高温下労働に関する対策や、核家族化した共稼ぎ家庭を対象に、男性の育児休暇や、子連れ出勤に対する対応も各地で始まっています。