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第847回 河長制の推進

(2018年11月29日)

第13次5カ年計画開始(2016~)以来、水関係で最も特徴的な対策といえば河長制でしょう。勿論、河長制というコンセプトは以前からありました。例えば江蘇省は、2007年に太湖で藻が大発生したのを契機に、無錫市が全国に先駆け河長制を実施、2012年以降は、そのコンセプト自体も、単なる水質汚染防止から、より多目的、総合的な方向へ発展、既に10年に及ぶ経験を積んでいます。浙江省紹興市では2013年に河長制管理実施方案を策定、2015年には水質が明らかに改善され、2017年になると、地級市である同市内47市の70%以上の水質が三級以上に改善されました。同市は水郷の街ですが、紡績の街でもあり、全国の染め物の3割以上を占め、水質汚染も深刻だったのです。それを改善するため、市・県・鎮・村という行政4レベルの長5120名が同市内のあらゆる水路に対して河長として取り組んだわけです。浙江省全体でみると、2013年に河長制を全面的に実施して以降4年間に、3万社の小企業、5万戸以上の養殖場を閉鎖し、ごみだらけの河川6500kmを浄化、水質Ⅲ類以上が77.4%に達したと報道されています。
こうした先駆的な成果をもとに、2016年12月、政府は<河長制全面推進に関する意見>を出し、各地域に方針の貫徹を求めました。中国には流域面積が50㎢を超える河川が45203本あり、水面面積が常時1㎢の天然湖沼は2865個に達しますが、河道が枯れたり、湖沼が委縮したり、汚染が深刻化したりといった例が続出していたのです。そこで同意見では、上流河流、左岸右岸が連携し、一本の川で一つのプラン、一つの湖で一つのプランとし、省・市・県・郷の4段階河長制とし、各一級行政区に総河長を置き、県レベル以上の河長には弁公室を設けるよう指示しています。更にその任務として、水源の保護、河岸湖岸の管理、水質汚染の防止、水環境対策などを、また、取り締まりの具体的な事例として、水面湖面の占拠、排出汚染、違法な土砂の採掘、電気ショック漁法などを挙げています。
2017年、政府は流域生態補償探索長期効果システムを打ち出し、下流は上流が生態環境改善に努力することに補償金を供出する代わりに、上流による水の汚染や過度の水使用がもたらす被害に対し補償請求ができるようにしました。こうした河長制は2017年中頃から2018年にかけ、全国的な広がりを見せ、ドキュメンタリー映画の製作も行われています。

次回は12月6日の更新予定 テーマは<少年犯罪の動向>です。

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