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第852回 最近の日中関係-2018年その2-
(2019年1月17日)
2018年10月26日、ついに、安倍首相の中国公式訪問が実現しました。習近平国家主席は釣魚台賓館で安倍首相と会見、安倍首相の近年における関係改善に対する積極的な努力を称賛すると共に、幅広い文化交流を進め、若い世代が中日友好に積極的に身を投じることへの期待感を示し、安倍首相も日中新時代を切り開く意欲を示しました。翌27日の人民日報11面の『鐘声』欄には、「中日関係の新しい発展を推進しよう」という長文の記事が掲載されました。安倍首相訪問の3日前、10月23日の人民日報には、再度、程永華駐日大使の長大な寄稿文が掲載されていました。大使就任以来、厳しい日中関係を身を以って体験し、苦難を背負ってきた同大使の思いが込められた文章でした。12月29日、王毅国務委員兼外相は、人民日報記者の取材を受けて2018年1年間の外交を振り返り、日中関係について、「我々は日本側の関係改善への願いに積極的に対応し、双方が一連の高級レベルの交流を実施、両国の関係を正常な軌道に戻した」と評価しました。
政治上でのこうした雪解けを反映して、夏以降、民間交流が活発に実施され始め、8月29日には平和友好条約締結40周年を記念した日中大学生千人交流大会が北京で開催され、両国首相からも祝辞が寄せられました。
それでは、こうした動きの中で、人民日報にはこの1年、どんな日本関係記事が掲載されたのでしょうか。安倍政権の新安全保障法案や改憲に対する批判記事や沖縄の基地移転建設問題に関する記事はそれぞれ5~6本ずつあったものの、数としては目立たなくなりました。過去の戦争に関する記事もほぼ記念行事絡みのもので、回顧し、歴史に学ぼう、という趣旨がほとんど、過去を教訓として未来志向を、という論調が濃くなり、その数もこれまでは月によって10本以上あったのが年間でも10数本程度と激減しています。
その一方で、ここ数年その数が低く抑えられていた日本の様々な側面を紹介する記事が増えています。8月10付では、福岡の「一人一花」活動が、9月9日付では、日本ミュージカルの父、浅利慶太氏が、10月15日付では、日本の小さな町の農業への取り組みが大きく紹介されました。今、中国で鎮の発展が課題になっている、その関係でしょう。その一方で、うち続く企業の不正行為、民宿の混乱などにも厳しい目が向けられています。