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第856回 成渝経済圏の変貌-重慶

(2019年2月14日)

かの日中戦争で中華民国政府の抗日拠点となった重慶が新たな脚光を浴びています。前回触れた一帯一路のパンタグラフの中心的役割を果たすとともに、長江経済ベルトとの接点であり、西部地区と東部地区を結ぶボルトの役目も果たしています。また、都市化モデルとしても、大量の農村余剰人口の都市への流入、少数民族問題、ダム建設による移民問題、貧困格差是正、沿海地方への出稼ぎ農民の回流、地場産業育成、生態重視型経済の発展など、今の中国が抱える様々な重要問題の象徴的るつぼとして、その対応が注視されています。
2017年秋の党大会前7月、孫政才重慶市書記が解任されるという激震が走り、後任に習近平総書記の腹心、陳敏爾氏が任命されました。前任の貴州省書記時代に貴州省を極貧省から中国有数のビッグデータ集積地に育て上げた実績もあります。直後の9月4日、人民日報は8面ぶち抜きで重慶特集を組み、そのトップページには随所に習近平総書記の名が散りばめられた陳敏爾氏の長文のメッセージが紹介されました。
重慶発展のきっかけは、2010年に上海浦東新区と天津濱海新区に続いて両江新区が設置されたことに始まります。5年後の2015年6月、人民日報は<両江新区、五年の驚喜>という記事を掲げ、その成果を絶賛しました。自動車産業(5000億元)・電子産業(4000憶元)・装備産業(2000憶元)という三大産業集積群、世界のノート型パソコンの5台に一台は両江製になり、自動車企業も8社(458万台)に達しました。同年、イノベーション駆動型発展を推進する戦略行動計画(2015-2020)が打ち出され、三つのイノベーションシステムが示されました。そのうちの一つ、「三つの千社」には、イノベーションを推進する仲介支援機構やハイテク型「小巨人」企業の育成が重点項目として含まれました。こういった政策の成果はいずれまた紹介することとして、最近注目されるのが「南向通道」です。
2017年8月、甘粛省・重慶市・貴州省・広西チワン族自治区が<中国-シンガポール相互通行プロジェクト“南向通道”の共同構築に関する枠組み協定>に調印、スムーズな通関による一帯と一路を結ぶ物流ルートが実現しました。これは、第12次5カ年計画で策定された、今後の中国地域発展計画マザープラン<全国主体機能区計画>の骨組みである“二横三縦”に沿ったもので、その中心、重慶の占める位置の重要性がますます高まっています。

次回は2月21日の更新予定 テーマは<宗教政策>です。

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