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第857回 宗教政策-その1-
(2019年2月21日)
現代中国国内の主な宗教と言えば、儒教・仏教・道教・イスラム教・キリスト教(カトリック、プロテスタント)と言うことになりますが、中国政府の公式発表には儒教は宗教としては含まれていません。儒教を儒家思想と言う範疇にくくることで、無神論が前提となる共産党統治の中での援用に抵抗が生じることを避けてのことと言えましょう。2018年時点での政府統計によれば、上記各宗教の総和は、信徒2憶人前後、仏教や道教の信徒が多く、カトリック教徒は600万人、プロテスタントは3800万人としていますが、表に出た数字だけでは到底測りきれない部分もあります。上記のような全国的な規模を誇る宗教については、中国仏教協会、中国道教協会、中国イスラム教協会、中国天主教協会、中国天主教主教団、中国基督教三自愛国運動委員会、中国基督教協会という7団体がありますが、全体としては5500もの宗教団体があり、法律に基づいて登記された宗教的な活動場所は14万4000箇所にのぼっています。
中国の長い歴史の中で、政治と宗教の関係は常にその主旋律と不可分な関係にあり、それゆえ、歴代の王朝は、宗教政策には細心あるいは極めて敏感な対応をし、その対策に腐心してきました。中国の歴史の中で、それが理論立った政策として確立され、それに基づく管理が行われたのは前漢の武帝期と言われていますが、その後、仏教の流入につれ、後漢時代以降魏晋南北朝期には、儒仏道の激しい角逐と融合が進んだことは周知のとおりです。
宗教は洋の東西を問わず、貧困あるいは被圧迫者の救済が大きな役割で、その点では、共産主義と軌を一にしている部分があります。ただ、決定的な違いは、宗教が、現世からの逃避と来世への希望によって民衆を慰撫する役目を果たそうとするとき、神を信じず、現世での闘いによって自己の解放を実現しようという共産主義とは袂を分かちます。
しかし、現世からの逃避と来世への希望という宗教の持つ側面は、かろうじて衣食が足る、という最低限の生存環境を維持できる環境下では、為政者への不満の矛先を鈍らせることで、権力者との協力も有り得、宗教と国家権力の互助関係が成り立ちますが、そのボトムラインを下回れば、宗教は共産主義同様、現世の変革を意図するパワーに変身します。こういった宗教と共産主義統治の関係を習近平はどう扱おうとしているのか、それは次回に。