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第858回 宗教政策-その2-
(2019年2月28日)
2017年8月26日、李克強首相は国務院第686号令に署名、改訂<宗教事務条例>を公布しました。この新訂版公布の動機について、政府は以下の理由を列挙しています。①宗教を口実にした国外からの様々な浸透が顕著になってきていること ②過激な宗教、違法な宗教活動が地方で蔓延していること ③ネット上での宗教問題が目立ち始めたこと ④宗教に名を借りた乱脈な商業行為、宗教組織及びその関連組織の経済的トラブルが頻発していること ⑤流動人口の宗教活動を把握しきれていないこと。 中国において宗教と法治の関係をどう捉えるかは各王朝における重要な政策であり、清朝は理藩院を設立して蒙古、チベット、ウィグルなどの民族宗教事務を扱わせ、懐柔政策を取る一方、宗教界のリーダーの権力を削ぐという飴と鞭を使い分けました。カトリック教徒に対しては、当初は容認しましたが、康熙帝の時代に禁教令が出され、アヘン戦争まで続きました。1911年の辛亥革命以降、中華民国期には1912年の「中華民国臨時約法」第5条で「中華民国人民は一律平等で、種族・階級・宗教による区別はしない」と規定され、その精神は1946年発布の「中華民国憲法」にも受け継がれました。一方、中華人民共和国でも、政権奪取前の1934年公布の「中華ソビエト共和国憲法大綱」で、「労働者・農民・紅軍戦士と労働に苦しむすべての大衆とその家族は、男女・種族・宗教を分かたず、ソビエト法律の前では一律平等である」と規定され、現行憲法でも「中華人民共和国公民は宗教信仰の自由を有する」「如何なる国家機関・社会団体・個人も宗教を信仰する公民と信仰しない公民を差別してはならない」「国家は正常な宗教活動を保護する」と規定しましたが、その一方で、「宗教団体と宗教事務は外国勢力の支配を受けない」ともしています。2016年4月、習近平は全国宗教工作会議を15年ぶりに招集し、「重要講話」を発表、「中国独自の社会主義宗教理論を打ち建て、断固とした態度で宗教を中国化へと導き、宗教工作の法治化を進め、マルクス主義的宗教観を発展させる」よう呼びかけました。
現在の中国政府の宗教問題に対するキーワードはこの法治化・制度化で、最近、刑法・民法総則・反テロ法・国家安全法・国外NGO国内活動管理法に重要項目として宗教が盛り込まれているのはその証左と言えましょう。