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第860回 宇宙開発事業最近の動き―その2-
(2019年3月14日)
ナビゲーションシステムに関連して更に注目しておくべきことは、やはり2017年に採用された<全国衛星測位基準サービスシステム>で、GPS、北斗、GLONASS、ガリレオなどを網羅し、ミリ単位の精度で位置情報を提供できます。これに合わせ、これを受信する2700カ所の電子基準点が全国に設置されました。これによって中国全土及びアジア全域の70%がカバーされ、加えて同年11月には北斗三号が打ち上げられ、いよいよ世界全体をカバーするネットワークへ向けた動きが始まりました。これによって、単に一帯一路沿線諸国に北斗三号システムによるサービスを提供することにとどまらず、「2020年にはこのサービスを世界に広げ、2035年には北斗を中心とした総合測位授時システムを構築する」標榜しています。世界化も注目すべき動きですが、このようなシステムが中国国内で発揮する更なる画期的な役割にも注目しておく必要がありましょう。それは農村における道路整備です。周知の如く、1900年代後半から整備に力が入れられた「村々通」政策により、各地の農村に自動車道路が整備されてきましたが、いまだに道路が未整備で貧困解決のネックになっている農村、また、自動車道路はできたものの、その後の補修管理が悪かったり、十分な防災措置が講じられておらず、隠れた危険を抱えている農村の道路も珍しくありません。このような農村道路網について、衛星からの情報を基に科学的な管理を行われれば、全国の農村にとって大きな福音となりましょう。
2009年にスタートした北斗三号ネットワークですが、参加する衛星は2018年も引き続き打ち上げられており、同年中に43基に達し、一応の完成を見ました。今後はその応用が各分野に急速に波及すると考えられます。その一例が高速鉄道で、2019年に全線開通する北京-張家口高速鉄道では北斗システムを使った自動運転車両の導入が進められており、既に試験走行が始まっています。
2018年4月23日の第三回中国宇宙デーに中国有人宇宙プロジェクト事務局は第三期宇宙飛行士の募集を始めると宣言しました。2019年1月、嫦娥四号が初めて月の裏側に着陸した、というニュースが世界を驚かせましたが、今後も中国の宇宙事業の発展から目を離せません。