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第864回 全人代の政治報告をめぐって
(2019年4月11日)
約一か月余り前の3月5日、第13期全人代で李克強首相の政府工作報告が行われましたが、今回の全人代に対する関心事は主として二つあります。その一つはこれまでも縷々述べてきた、習近平の権力体制の構築と経済政策との絡みです。2017年の党大会と2018年春の全人代でその権力体制を完成させるためには一定の経済成長とそれによる国民の支持が不可欠で、そのため、2017年は経済成長をある程度犠牲にしても次なる発展を可能にするような経済構造・金融構造に深く切り込むことはできませんでした。しかし、鳴り物入りで掲げてきた2021年「小康社会実現」公約を成功させ、2022年の党大会へ向けた権力維持の道を確保するには、2020年までの第13次5か年計画の目標達成が不可欠で、その各目標数値の約75%程度は計画3年目の2018年に達成しておかなければ先の見通しが立ちません。そこで2018年は春の全人代以降、いくつかの重要な構造改革が待ったなしの状態だったのですが、そこに降って湧いた(?)のが、2017年に登場したアメリカのトランプ政権です。その強硬姿勢は2017年後半から徐々に現実味を帯び、2018年夏ごろには急速に悪化していきました。
例えば、同年7月、アメリカは中国に対して2000憶ドル分の輸入に対し制裁関税を課す、と発表、これに対し中国もすかさず600憶ドルドル分の輸入に対し報復関税を課す、と応酬し、実際、両者とも9月になってこれを実施しました。制裁関税の問題は、その後、10月になってトランプ大統領が更なる制裁の拡大をほのめかすなど、緊張が続きましたが、12月早々の米中会談でアメリカが、追加関税を2019年3月1日まで90日間猶予するという方針を打ち出しました。もちろんそれには条件がありました。
2018年10月、アメリカ政府は中国の国家安全省の人物をアメリカ企業から機密条項を盗もうとしたとして訴追したことを公表しましたが、翌11月には、27の主要先端産業に対する投資規制の実施に踏み切りました。その主要なターゲットが中国である事は疑いありません。実際、同時期にポンぺオ国務長官は中国の知財権侵害行為を名指しで非難していますし、米中経済安全保障調査委員会は、その年次報告書の中で中国の国家ぐるみでの不公正貿易を指弾しています。この続きは次回に。