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第865回 全人代の政治報告をめぐって-その2-
(2019年4月18日)
この流れの中で降ってわいたのが、華為の孟晩舟副会長がアメリカの要請に基づいてカナダで逮捕された事件。この問題は今なお決着がついていませんが、中国はこれに抗議する一方、アメリカの強硬姿勢に対して何らかの対応をせざるを得ない立場に追い込まれています。上述の90日間の猶予に対し、12月4日に知財権侵害取り締まり強化を宣言し、関係省庁による合同アクションプランも示しました。こうして先の全人代では新「外商投資法」が成立し、外資に対する技術移転強制が禁止され、「技術輸出入管理条例」の「外国技術を利用者が改良したら改良の成果は利用者のもの」などといった一部条項も廃止されました。こういった動きの中で、経済の失速を防ぎつつ、経済構造改革と対米摩擦の影響の深刻化にどう対処するかが最大の課題となり、2018年9月頃からそのための施策も並行して目につくようになりました。国務院常務会議は積極的な財政政策を指示、更に大幅な減税措置を講ずる方針も示されました。その一例が増値税の還付率を引き上げることで、同年11月1日より実施され、同時に、民間企業とりわけ中小企業やベンチャー企業に対する減税・融資の強化方針も打ち出されました。こういった流れが先の全人代首相報告へと引き継がれていったわけです。その中では、2019年の目標値として、GDP成長率は6~6.5%、消費者物価上昇率は3%前後、というボトムラインの堅持が表明される一方、景気を下支えするため、財政赤字の対GDP比率を前年比0.2%引き上げて2.8%とし、財政支出を6.5%増の23兆元強とする方針がしめされました。そして上記の方針を引き継ぎ、企業向け対策として、大規模な企業減税を実施し、増値税改革、電気料金引き下げ(平均10%)、中小企業向け通信料引き下げ、社会保険料負担の軽減に取り組む、としました。経済成長を頓挫させないための公共投資頼みは相変わらずで、鉄道関係に8000億元、道路・水運関係に1兆8000億元を見込むなど増額が目につきます。
その一方で、社会不安を助長しないよう、雇用対策にも力を入れ、失業保険基金から1000憶元を拠出。技術訓練や再就職を支援し、新規就労者数1100万人以上、農村貧困人口の1000万人以上の削減も目指しています。いずれにせよ、今後、対米政策の行方が中国の政治構造にどう影響するのかが注目されます。