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第873回 新疆ウイグル自治区の変貌―その2-

(2019年6月13日)

新疆に限りませんが、発展が遅れている地域に対する代表的支援方法が“对口支援”(パートナー支援)。新疆でもこの方法は継続して行われています。2015年の自治区成立60周年の際の集計では、2010年以来、19の省や市が同地区内の82の県や市のパートナーとなって支援を行い、広東省だけでも30の学校に“内地高中班”を開講、卒業生はほぼ全員大学入学を果たした、としています。2015年以降も、天津市は和田の三県を援助、山東省はカシュガルなどを中心に民生面での援助、広東省東莞市は企業誘致・金融サービス・プロジェクト管理などでの支援、とそれぞれ特色に応じた支援を行いました。企業による支援も盛んで、2016年には“千企帮千村”プロジェクトが始動、労働者の採用、技術訓練が積極的に推進されました。また、農業銀行などの金融機関による様々な支援も喧伝されました。2016年以降、特に力を入れたのが医療衛生面と教育面の向上で、妊産婦や乳幼児の死亡率は顕著に低下し、2017年12月1日から、新疆では幼稚園から高校まで15年間の教育が無料化されました。
      新疆は一帯一路政策における地理的優位性が近年その起爆剤となっており、西北経済圏はその広大な地域内に小規模経済圏が幾つも成立して、巨大な二重構造経済圏を構築しつつあり、トルファン、ハミなどが続々と市に昇格していますし、これと並行して「電化新疆」プロジェクトも精力的に進められ、農村の隅々まで電気が行き渡りました。過去、北部に比べ発展が遅れていた南疆も60周年頃を契機にようやく発展の恩恵が及び始め、カシュガルの都市改造や、各都市への職業教育の援助や幼児教育支援も始まっています。
      これらを列挙すれば、政府による新疆への支援は相当な成果を上げているということになりますが、そこで問題になるのが、これらの支援が、ウイグル族などにも公平に行き渡っているか、様々な経済援助がともすれば漢族支配の強化につながっていくのではないか、教育の充実が漢化教育になり、少数民族の文化を圧迫しないのか、若者の内地への吸収が民族文化の伝承を絶やすことにならないのか、漢族の大量流入が、少数民族を少数民族区内の少数民族にすることはないのか、といった様々な懸念です。その意味からも、2016年6月に発表された<新疆の宗教信仰自由状況>と2017年6月の<新疆人権事業の発展進歩>白書の内容は熟読吟味されるべきでしょう。

次回は6月20日の更新予定 テーマは<共産党の党内改革>です。

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