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第878回 庶民生活の変遷-その1-
(2019年7月23日)
改革開放が始まって40年が過ぎました。言うまでもなくそれは、中国五千年の歴史の中でも庶民生活の変化が最も激しかった40年と言えるでしょう。1978年当時の、あの灰色一色の煤けた上海の街を知る人のうち、誰が今の上海を想像できたことでしょうか。
40年の変化ではどんな変化が目につくでしょう。当時の北京では、あの長安街をロバに引かせた荷車が闊歩していました。車はほとんどなく、オオカミのように鼻づらが突き出たバスが走っていたものです。人々は誰もが人民服、1980年に女性のスカートを初めて天壇で見た時の感激(?)は今も忘れません。
朝起きると歯ブラシを口にくわえ、街の“報刊亭” で買ってきた新聞を読みながら仕切りのない公衆便所でしゃがんでいるおじさん、街のあちこちにある露天商たちが集う青空市、夏ともなれば至る所にスイカが山積みになり、そのゴミから漂うすえた匂い、大通りに日陰を作る街路樹の並木、そして自転車の洪水……。春になれば砂嵐に襲われ、柳絮に目も空けられず、夏の盛りに目がつくのは、太鼓腹を誇らしげに露出している年配の男性たち。そして何より懐かしいのが様々な食べ物。気をつけないとお腹を壊すけれど、たった一角で5人がお腹いっぱいになる大きな“煎饼”が食べられました。それも今は昔。そのうち一角が一元になり、水餃子も一人前30個食べて一元にもならなかったのが今なら15元はします。ラーメンもある時一杯3元になったと思ったら、今では10元以上とられます。
貧困生活から、“温饱”(衣食が十分)な生活へ、そして“小康生活”、更に“富裕”へとまっしぐらに突き進んできた中国。その速さは“七〇后”“八〇后”“九〇后”“〇〇后” と呼ばれる各世代を鮮明に色分けし、また、最近ではインターネット世代を指す“九五后”という言葉も使われます。90年代当初は3%ほどだった大学進学率が40%を超え、9年間の義務教育も90年代から急速に普及し、若者世代の意識は大きく変化しています。
ここ数年、そんな庶民生活の変化を回顧する記事が随分増えました。経済水準が一定の段階に達し、過去を振り返る余裕と、その間に知らず知らずのうちに失ってしまった、また、失いつつあるものへの哀惜の情が込められているようです。最近注目されているのが家計簿。家計簿はまさに生活の変遷の生き証人。まずはそこから辿ってみましょう。