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第881回 米中関係-最近のポイント
(2019年8月15日)
ここ一週間、米中関係に新たな動きが出ています。この8月1日、トランプ大統領は中国から輸入するすべての物品3250憶ドル相当に対し10%の追加制裁関税を課すると発表、中国で激震が走りました。なぜなら、直前の7月30~31日にかけ、上海で、劉鶴副首相(対米経済交渉の責任者)とアメリカのライトハイザー通商代表、ムニューシン財務長官との間で「率直かつ建設的な話し合い」(人民日報8.1付け)が行われ、これに合わせて、同紙の『锺声』欄は「让中美经贸合作正能量越来越多越多」という評論を掲げ、「中米貿易協議はついに新しい局面を切り開いた。双方はそれぞれが経済貿易面で共に関心を持つ重大問題についてより深い認識を持つに至った」として、「風雨の後に虹を見た」という表現さえしていたのです。わずか一晩で追加制裁関税措置の発表となったのですから、中国側が驚くのも無理はありません。同6日、アメリカはさらに追い打ちをかけ、中国を為替操作国に認定しました。これに対し、中国側も、「一方的な保護主義は国際的なルールに反する」と猛反発、7日付人民日報は、「乱贴‟汇率操纵国”标签终将自食其果」と題する金社平署名の評論を掲載してその非を鳴らし、翌8日には第三面全面を5本の記事で埋め尽して反論を展開しました。こうした急激な展開は世界経済にも深刻な打撃となり、世界全面株安を誘発し、日本も円高株安に陥りました。勿論、トランプの強引な「アメリカンファースト」で一時的な好景気に湧くアメリカ経済も例外ではなく特に、対抗措置として中国がアメリカの農産物の輸入の停止を決めたことは深刻な打撃を生みかねません。しかも、輸入停止による不足分について、ブラジルやロシアは中国の市場に食い込む絶好のチャンスと捉えており、アメリカの農家が中国という巨大市場を失うきっかけにもなりかねず、そうすれば、トランプにすれば、選挙向けの中国たたきが、かえって自らの足元を崩すことにもなります。
8月13日、トランプ政権は中国からの一部の輸入製品に対して、追加関税の実施を12月15日に延期する、と発表しました。勿論、これは単にクリスマス商戦に配慮してのアメリカ消費者に対する人気取りだけではなく、厳しい基準を打ち出しては猶予期間を置いて相手に譲歩を迫る、という過去にもあったトランプ流の常套手段ですが、一方で農産物輸入停止の影響を食い止めようという意図も無視できません。